『残酷な世界』~あなたの文は最後まで読まれない その1~

文章テクニック

こんにちは、文LABOの松村 瞳です。

 

今日の話は、結構衝撃的な事実です。というか、ちゃんと考えれば当たり前の事実なんですが、皆、けっこう考えようとしない。だからこそ、この点をちゃんと解っている人は、抜きん出ます。なので、抜きん出たいなと思う人だけ、読んでください。

 

 

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【提出した文は1分で読み捨てられる】

うつむく女の子

何がダメなんだろう……

-本人にとっては努力して書いた文章-

文章って、物凄く面倒です。読むのと書くのとでは、大違い。速読を習っている人は、一冊5分前後で読めますが、でも、その読んだ文章を書く、となったら膨大な時間が掛かります。右から左に写すだけでも一苦労で、その内容を自分の頭で考えて書く、となったら、モノにもよりますが、数時間ぐらいはあっという間に過ぎ去ってしまいます。

だからこそ、それだけ苦労して書いた文章。相手にちゃんと読んでもらいたいですよね。

 

頑張って書いたんだから、感想欲しい!!
コメントくれよっ!! 今日一日かけて書いたのにっ!!
こっちなんて、数日かかってるし!!
こっちはもう一ヶ月かけてるよ。
だから、ちゃんと読んで反応くれよっ!!

当然思いますよね。小学生向けの読書感想文でも、皆、毎回毎回すっごく頑張って書いてくるんです。どうだっ!! って感じで胸を張って、ちょっと誇らしげなくらいに。

でもね、そうやって頑張って書いた文章。読まれるの、どれぐらいの時間だと思いますか? 5分? 10分? 論文とか長いレポートだったら30分ぐらいかな?ちゃんと丁寧に読みこんでくれたら、もっと時間かけてくれるかも。

口に出しては言わないけど、皆、最後まで読んでくれることを期待しています。頑張った子ほど、そうです。「あれだけ努力したんだから!!」と丁寧に読みこまれる事を期待して、目をキラキラと輝かせて。

中学でも高校でも、「これ、結構自信ありますっ!!」ってめちゃくちゃ張り切って出してくる生徒達。受験で作文が課題に出される学校の過去問でもどや顔で皆、出してきます。どう? 結構良いでしょう?満点以外、有り得ないでしょう? って顔して。

(その顔が数分後にどうなるかは……ご想像にお任せします)

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-数秒で読み捨てられる現実-

 

ただ、残念ながら現実は、とっても残酷です。殆どの場合、あなたが頑張って書いた文章は最後まで読まれる事はありません。90%は、数秒で捨てられます。

そう。数秒しか、読んで貰えないんです。

 

-読書感想文で審査員が1作品にかける時間-

夏休みの宿題で定番の読書感想文。最後まで残ってしまう、いや~な宿題の典型として、記憶に残っている人も多いと思います。小学生達は、現役で苦しんでいる真っ最中かな?(そろそろ課題図書が発表される時期ですね)

で、真っ白い原稿用紙と格闘して、何とか埋めて、提出した文章は、お決まりのコンクールへ向かいます。

しかし。

某県の教師曰く、第一次審査で読まれるのは、殆ど1枚目の半分。文字数にして、200文字前後。ツイッターの投稿が140字までだから、アレぐらいの量しか読まれない、というと、量的に解りやすいでしょう。

時間にして数秒。長くても、1分。

それで、あなたの書いた文章が判断されてしまうんです。

どれだけあなたが時間をかけようとも。どれだけ努力したとしても、たった1分で、捨てられる。受験で言うのならば、それで合否が決まってしまう。就活なら、不採用決定、です。

1度、不採用に入ってしまった文章は、2度と採用される事はありません。1度駄目だと思われてしまったら、2度と読んで貰えないのです。しかも、その判定はあなたが書いた時間、かけた努力は全く加味されません。

たった、1分。たった60秒の勝負。そこが運命の分かれ道です。

えっ? そんな酷いっ!!
先生なんだから、最後まで読めよっ!!
読むのが仕事だろうがっ!!
そんな短い時間で、不合格を決めないで!!1年頑張ってきたのに!!
嘘だろ……そんなの。ただの、脅しだろ……? まさか、そんなっ……

これね、指導するなかで、毎年生徒に言うんです。

あなたの文章、試験官が最後まで読んでくれると思う?

 

 

って。

で、皆こう応える。

受験って言う、 人の人生を決める大事な審査なのだから、そりゃ、丁寧に最後まで読んでくれるはずでしょう!!そうでなければおかしい。そうあるべきだっ!

って、力説する子も居ます。

毎年。そう。毎年なんです。

何故か知らないですけど、皆。自分の文章は最後まで読まれる筈だって、かた~く信じているんですよね。それこそ、何かの信仰なのかな? と思うぐらい頑なに信じている。

でも、現実は残酷です。これが、受験の現実です。

-想像力を働かせよう-

 

最後まで読むべきだっ!!

と主張するなら、ちょっと想像してみましょう。

あなたの目の前に、何百枚、何千枚、何万枚もの原稿用紙がうずたかく積み上がっている光景を。

受験を例に上げてみましょうか。定員が100人前後の進学校。倍率は5倍。受験科目として、作文が全員必須だとします。

すると……

単純計算で、採点員は500人分の文章を読むことになります。その中から100人を選ぶとしたら、落ちる人の方が多くなりますよね。そして、恐ろしい事にこの仕事には時間制限があります。大抵数日で、合否を出さなければなりません。

受験の課題作文や小論文の量は、学校にもよりますが、1000字程度です。原稿用紙約3枚分弱。人の読書スピードは個人差がありますが、平均値は大体、1分間に400字~600字。今は間をとって、500字/分と仮定します。

すると掛かる時間は……

(1000字×500人分)÷500/分=1000分
1000分って、何時間か解りますか?
1000分÷60分=16.666….
約17時間……ブラック企業も真っ青の労働時間です。読むだけで、これだけの時間が掛かる。更にこれに判定を付けたら、どうなるか。

1人、1分を合否判断にかけたとしましょう。
1分×500人=500分
500分÷60分=8.3…約8時間プラスです。

17時間+8時間=25時間……日付が変わってしまいます。

物理的に文章課題の科目の場合、受験生全員の文章を「最後まで全部読む」と言うのは、本当に不可能なんです。しかもこの計算。人間には付き物の、集中力の低下、と言うものを計算に入れていません。そんなことをしていたら、合否判断に1か月近くかかることになります。

これは、就職試験でも同じことが言えます。大企業や受験者数の母数が多ければ多いほどあなたの文章はまともに読んでもらえません。これは、脅しでも何でもなく、単純な、客観的な事実です。

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【まとめ 自分の都合を優先しない】

この事実を受け止めるかどうか。そこを理解出来るかどうか。理解せずに、「いや、教育機関なんだから、ちゃんと読んでくれるはずっ!!」「企業だって良い人材は欲しい筈だから、ちゃんと読んでくれるはずっ!!」と思いこみたい人は、勝手にどうぞ。

そして、自分の人生で、ツケを払ってください。

 

そう、世界は残酷なんです。

 

なら、その残酷な世界でどう生きるか。続きは明日のその2で。

此処まで読んで頂いてありがとうございました。

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