小説読解 太宰治「走れメロス」その4~二項対立を読み取る~


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こんにちは、文LABOの松村瞳です。

皆さま、推理小説お好きでしょうか?

古今東西、様々な名探偵が小説の中には存在しますが、彼らが物語の中で共通して行っていることがあります。推理をしているのは当然として、彼らが何をしているのか。そして、熱烈な推理小説ファンも、同じ行動をとりながら小説を読みます。

それは、メモです。

文章に書いてあることは、大量の情報です。その情報をまとめ、整理をする。すると、解り辛いことや複雑なことも、実は単純なものなのだということがすっきりと理解出来てきます。

殆どの生徒は、苦労をしなくとも簡単に全てを理解できる力を欲しがるものですが、その理解能力を手に入れるためには面倒なことをするのが必須です。丁寧にメモをとる。自分でまとめてみる。それを繰り返すことで、最初は膨大に書いていたメモをすっきりと省略してとれるように。重要な部分だけが浮き上がって見つけられるようになってきます。

観察能力と分析能力を高めたければ、メモを取ろう。

不思議なのですが、能力が無い人間ほど、短絡的な解決方法を選択しようとします。結果が出ない事に不安になり、あれもこれもと手を出し続け、結局何一つ手に入れられずに終わってしまう。

結果を掴みたいのならば、基本的な、誰でも出来るところから始めましょう。違う読み方が出来るようになってくると、楽しいですよ。

【王様は結構優しい? 冠たる者の孤独】

短剣を王城に持ちこんだ短剣が原因で、メロスは王に謁見することに。

これは古代の世界では本当にあり得ない事です。民衆が王に謁見する。それだけでも貴重なのに、直接言葉を交わすことも本当は出来ない事なのに、それが可能になっている。メロス……どれだけ暴れたんだろう……そして、王様。自分を殺しにやってきた相手と会うって、結構優しいような……

言い分は聞こうとしていたのでしょうね。公平に、周囲の声は誠実に耳を傾けようとしていたのかなと、当時の王政時代の背景を考えるとそう思えてなりません。

王の力は絶対です。なので、反論一つで首が飛んでもおかしくない相手ですし、それだけの権力を持ち、自分に反する相手を処刑する力を持っています。

メロスは暴力を持って王の間違いを正そうとしたのだから、処刑されてもおかしくない。王様の方が、結構まともに見えてきてしまいます。暴力で問題解決をしようとした相手に、目には目を。暴力には暴力で返すのではなく、まず話をしようとする姿勢を見せた。

そこで、王は語ります。蒼白の顔色で、眉間のしわが刻みこまれた表情で。

「お前には、私の孤独の心は解らない」
「人は、疑うべき存在で、疑うのが正当の心構えなのだと教えてくれたのは、教えてくれたのはお前達だ」と。

孤独=信頼できる人がいない。
そして、疑うべき存在だと教えてくれたのはお前達、人間だということは、そういう心境になっただけの出来事があったということです。最初からこうであったのならば、苦しそうな表情をするはずがありません。

ならば、過去。王は人を信じよう。信頼しようと思っていたということです。

しかし、自分の信頼していた人が己の欲望を満たすために王を裏切り、それが何度も続き、ボロボロになった末。「人は信じられない。疑うべき存在だ」という考えになってしまった。

裏切られ、傷付き、そして孤独になってしまった。

「口では、どんな清らかなことも言える」=王を裏切っていた相手は、全て口からでまかせを言っていたということです。だから、人の言葉が信じられなくなっている。

信じろというのならば、言葉でなく、行動で示せと、暗にこの後の物語を示唆する布石ともなっています。

強い権力を持っているが故の孤独。冠たるもの。リーダーたる者、仲間と信頼していたとしても、方向を決める時や周りを率いる時には、舐められてはどうしようもありません。強さを持ち合わせていなければならない。この孤独に負けてしまい、権力に振り回されて終わってしまう権力者は、歴史に数多く存在しています。

強い権力を持っている存在は、それだけ責任も負わされている、ということなのですね。

【二項対立を見抜け】

評論文でも言えることなのですが、相反する意見、というものは掲げやすいテーマです。

そして、小説の中でもテーマとして持ち込まれることは多くあります。それを紙に書き出しておくと、とっても後から楽になります。

王は孤独。対し、メロスは孤独を知りません。何せ友達もいるし、家族。妹もいる。

そして、

王は人は疑うべき存在であり、信じてはならない、としています。
信じるものだというのならば、行動で証明して見せろと証拠を欲しがっている。

対し、




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メロスは人は信じるに足る存在であり、人を疑うことは最も恥ずべきことだと。

王は、疑うのが正当。
メロスは、信じることが正当。

真っ向から対立しています。

この対立している意見をしっかりと押さえておく。

反発しあう意見があったときには、それを認識するだけでなく、横に書き出しておくと間違いありません。試験で時間が無い、という人も、癖にしておくと良いです。

訳も解らず読み進めるよりも、確実に解る部分を多く残しておいて、その後を読み進める方が結果的に点数に繋がります。対立する意見を、必ずメモっておく。

それが後々、力になっていきます。

【メロスのあり得ない提案に乗っかる王様】

言葉だけでは信じられない王様に、メロスは「さぁ、処刑しろ」と宣言しますが、何かを思い出したように懇願する口調になります。

ここで、よーく表記に注意してほしいのは、ここだけメロスの口調が敬語になっています。です、ます調。なんだ、敬語知っているんじゃないか。知っているのに使わなかったということは、使うつもりが無かったということ。

そして、頼みごとの時には使っている、ということは、メロスは馬鹿ではあるけれど、ちゃんと計算高い部分も持っていることが解ります。

ある意味、すごく人間臭い設定ですよね。ちゃんと自分の要求を聞いてもらいたいときには、媚び諂うことも辞さない。メロスのズルさが垣間見える瞬間です。

で、王様は人のそういう私欲の部分に敏感になっている。

妹の結婚式を挙げてあげたいから、三日間だけ待ってくれ。信じないというのならば、身代わりとして友達を置いていく。必ず、私は三日後の日暮れまでに戻ってくるからと、懇願します。返ってこなかったら、身代わりの友人を絞め殺していいとまで、言います。

王は人を信じていません。人は自分の主張を通したいから、証拠を集めたくなる。だから、残虐な気持ちでメロスの提案に乗りました。

きっとこいつは裏切る。帰ってくるはずがない。だから、間に合わないように戻って来いと、わざと挑発までします。

人はこれだから信じられない。と、自分以外の人間にも思い知らせてやりたい。自分がどれだけ苦しい思いをしているのか、解らせてやりたい。

王様、どれだけ裏切られたんでしょうね………ここまで考えるようになってしまうまで、どんな経験をしたのかなと、ちょっと考えてしまいます。

殺した相手が家族ですものね。自分の子供まで手をかけている。どんな状況だったのかを考えると、陰鬱とした気持ちになります。だって、きちんと人の話を聞き、問答無用で処刑をする人ではないのは、メロスへの対応をみれば明らかです。

そんなこんなで、二人の賭けは始まります。

続きはまた明日。

類は友を呼ぶ? このお話の最大の被害者。セリヌンティウスについて、解説します。

ここまで読んで頂いて、ありがとうございました。






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