ファンタジー・ワールドの誕生 解説その5

ファンタジー・ワールドの誕生
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「ファンタジー・ワールドの誕生」解説 その5。

今日からは、後半の部分になります。

第7段落と第8段落の間には数行空白が空いているので、内容的に区切れているのは解りやすいですよね。

大抵の評論文は、具体例⇒分析⇒まとめ と進むので、こっからがまとめの部分。

そして、この教科書抜粋の部分では、難しい部分に差し掛かってきます。

けれど、難しいっていっても、内容は同じなのです。前半部分の読解がきちんと出来ていれば、こわがるひつようは全然ありません。

だって言っている内容って、同じですし、関連性は絶対にある。ちゃんとリンクしているから、それを頭の中において読めば、もし解らなくなったとしても冷静に考えることでカバーできます。

その読み方を、身に付けていきましょう。

前半まとめはこちら⇒ファンタジー・ワールドの誕生 解説その4

 

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【第8段落 前半】

この第8段落。恐らく、解らない言葉のオンパレードだと思うので、ぜひノートに「自分の解りやすい言葉」で書くことをお勧めします。

そうすることで、頭の中で翻訳機能が働き、模試でもちゃんと思い出せるようになるので、是非してください。

日本語なんだから翻訳なんでいらないだろ~、って子は、偏差値40台でいいなら、そのままでいてくださいね。確実に、そうなるから。

これを読んでるあなたがそう思ってるなら、今すぐその考え、ゴミ箱にポイしてください。捨ててください。っていうか、捨てて。お願いだから、今すぐ捨てて。

日本語だって、読んで意味が解らない言葉なんか、山のように存在します。母国語だって油断するから、辞書を引こうっていう気持ちが無くなっちゃうんです。それは本当に害悪だから。あなたが思っている以上に、害悪です。点数伸びないな~。なんて、呑気なこと言ってる場合じゃないです。

模試で評論文を読んだ時、解らない言葉に困ったことが無い人間なんて、存在しません。雰囲気で、何となく、で、点数が取れる世界は中学校まで。いい加減、高校生になりましょうね。

-プリミティヴィズムと権力システム-

オルークの「カンニバル・ツアーズ」がとらえた映像は、過剰な編集をおさえたその即物的ともいえるまなざしによって、現代の西欧的プリミティヴィズムが押し出す「観光旅行」が、どのようなかたちで権力のシステムの一部を担っているかをじょうずに示している。(本文より)

即物的とは、自分の考えや先入観などをできるだけ省いて、目の前にある現実だけを写しだそうとすること。また、現実だけを考える、ということ。

要するに、そのまんまを見たり、考えたりする行動、ということ。

じゃあ、現代の西欧的プリミティヴィズムって何だよ? という話になるのですが、まず、複合語なので、「西欧」と「プリミティヴィズム」を分けます。

「西欧」はそのまま。ヨーロッパ、という意味。特に、西ヨーロッパの考え方を指します。

次は、「プリミティヴィズム」。

語源はプリミティヴ。意味は、原始的、未開の、です。プリミティヴィズムはその派生語で、現代よりも原始時代の方が良い時代だとする考え方。

昔は良かった、というアレです。

今の民主主義だって、近代になって生み出されたもので、人民が獲得したものだと思っている人が多いかもしれませんが、共和制なんか、紀元前のローマ時代に存在していますし、選挙もその時に行われているシステムです。

プリミティヴィズムを四文字熟語に置き換えるのならば、温故知新でしょうか。

古い物を振り返ることによって、新しい発見がある。過ぎ去ったものの中に、惹かれてしまうものや、新たな発見を見つけてしまう。

プリミティヴィズムって、そういうこと。

じゃあ、西欧的プリミティヴィズムってどういう事なのか。

西欧的というのは、現在の日本も含めた、先進工業国。つまり、技術革新によって国を豊かに発展させてきた国々のことを指します。

解りやすくいうと、技術革新より、より豊かで快適な生活をし続けている人たちが、原始時代の生活にあこがれ、それらを自分たちよりも優れたものだとし、体験したい。見てみたい、知りたいと思い、願うことです。

ポイントは、「豊かで快適な生活」を享受(喜んで受け止めている)人々が、「敢えて未開の土地に、憧れる」ということ。

その考え方が、「観光旅行」を、ここまでの娯楽にしているし、この評論文の最初にある「食人族ツアー」を成り立たせています。

 

それが権力のシステムの一部をじょうずに表している、と筆者は言っています。

観光旅行が権力システムの一部? どう言うこと? と思うかもしれませんが、そもそも権力って何でしょうね。

権力とは、他人を支配し、服従させる力です。

ここで思い出してほしいのは、買い物の話。(参照⇒ファンタジー・ワールドの誕生 解説その3)

西欧人は、現地人の民芸品を値切ります。決して、相手が最初に言った価格で買おうとはしません。

お金に困っていないのに、なんでそんなことするの? という疑問がありましたが、ここにも一つの原因があるのです。

そう。相手の言った値段で買う、ということは、相手の意志に従うことです。

じゃあ、逆に自分が値切って相手にその値段を認めさせたら、どうなるでしょうか。

そう。その場を支配しているのは、値切った自分達、ということになりますよね。

写真撮影もそうです。

SNSに上がっている写真を見ても、解りやすいかもしれません。プライバシーの保護が叫ばれ、シェアされる画像やネットに上げる画像には気を付けろ。相手のことを考えて、顔をぼかせ。誰が映っているか解らない様に配慮を! という、この新しいネットリテラシー。

これは相手を「同等の存在」「相手の権利を認めている」状態で、生まれてくるマナーです。

さて、もしもこの「食人族ツアー」に参加した人達がSNSをやっていたとして。

この文化的背景から切り取られ、無色透明のアイテム化した彼らの画像を、彼らのプライバシーを考慮して、SNSに上げることをためらうでしょうか?

おそらく、ためらわないですよね。

自分の自由にしていいもの。つまり、服上させている。支配させているもの、として扱っているからこそ、パシャパシャと写真が撮れる。

そんな相手の意志を認めない。思い通りに支配する権力の断片が、ここに見え隠れする。

そして、それを当たり前にしてしまっているシステムが、既に存在している、と言うのです。

そんなひどい意味が入っていたのかと、これを説明すると愕然とする生徒が毎年多いです。そう。言葉って、知っていても、認識できていない部分って山のようにあるんです。

-「未開文化」とは-

「未開文化」とは、まさにそれを破壊-変容させた張本人である植民地主義の想像力がうみだした、一種のノスタルジックな憧憬の対象であった。(本文より)

「未開文化」

つまり、まだ開けていない。開化していない、文化。

文明開化の言葉があるように、技術化、近代化、都市化をしていない文化ということになります。

具体例で言うのならば、今回の「食人族ツアー」で「観光された側」だった部族のこと。

でも、おかしいんですよね。

本当に未開の文化だったら、言葉が何故通じるのでしょうか? それも、西欧的な言語が。値切ることが出来るってことは、少なくとも言語が通じるということ。通訳を介してかもしれませんが、それでも通じる言語システムがある、と言うことです。

更には、彼らはストアにいって買い物をしています。貨幣概念があるし、市場もある。

本当に、未開の文化、なのでしょうか?

本当に未開文化であるのならば、独自の言語や此方の通貨と交換できるレートなんか、存在しないはずです。基本、見慣れない存在が来たら、あなただったらどうします? その人がぱしゃばしゃ写真撮ったり、家のものを全然知らない紙(紙幣)と交換で取っていこうとしたら?

まぁ、追い出しますよね。普通。

近寄らず、出来るなら関わり合いになりたくないなー、って思うはずです。

そう。「観光」という行動には、当たり前ですがその「観光客」を受け止める土台が必要です。

この西欧人達。現地人と同じ様な場所に、泊まると思いますか? どう考えても、リゾートホテルに泊まりますよね。と言うことは、バリバリに近代化、都市化しているわけなんです。

未開な文化、なんか無い。存在しないんです。

それを破壊したのは自分達の祖先。植民地時代にリゾートとして使えるよう、徹底的に開発している部分があるんです。植民地時代には、「特別区」なんて名称が付いていた場所がそこに当たります。

なのに、「未開な文化」を望む。

開かれていない場所に行ってみたい。文明化していない場所を訪れてみたいと、思う。興味が沸く。

一様に、この「食人族ツアー」に参加している人々が笑顔であるのは、「見たことも無い世界に行ってみたい」という興味関心があるから。

ノスタルジックとは、遠い昔に郷愁を感じること。郷愁ってなに? と思うかもしれませんが、故郷を懐かしく思う気持ちです。

ここでいう故郷とは、それぞれの故郷では無く、人間としての故郷。原始時代のこと。

つまり、原始的な人間がどのような生活をしているのだろう……と考え、興味が沸き、観光旅行会社が作った旅行用のパンフレットに好奇心が刺激され、未開な地に行ってみたい!! という憧れがむくむくと湧き上がり、ニューギニアを訪れる。

けど、そこは君達西欧人が昔。徹底的に開発、そして破壊した、「観光用」に作られ「原始的生活風景」だということを、訪れた西欧人自体が全く認識していないことを、筆者は指摘しています。

 

長くなってので、続きはまた明日。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

続きはこちら⇒ファンタジー・ワールドの誕生 解説その6

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