こんにちは、文LABOの松村 瞳です。
今回は、古文解説。
古文って、つまんなーい。
そういう生徒の声を聞くと、俄然やる気になる人間なので、それを少しまとめてみようと思います。
人間って、つまらないって思うと、記憶力減退するんですね。でも、面白いって思うと、一気に記憶の蓋が開く。なので、堅苦しい教科書的な解釈は横に置いておいて、ちょっと斜めから見た、古文解説となります。
間違っても、これを試験の解答に書かないでね。
現役諸君。
【本文】
-第1~3文目-
原文
今は昔、竹取りの翁といふ者ありけり。
野山にまじりて竹を取りつつ、
よろづのことに使ひけり。
名をば、さぬきの造(みやつこ)となむいひける。
訳
昔々、竹を取って生活しているお爺さんが居ました。
名前をさぬきの造と言ったそうです。
解説
有名な冒頭。
登場人物の紹介からですね。今からこういう人が出てきますよー、という予告。
殆どの古文の物語は、冒頭、紹介から始まります。
ポイントは、名前、職業、性別、身分、出身地。
なんか、今の就活の面接冒頭みたいですよね。千年前も、現在も、紹介の内容はあんまり変わらないのかな。今だとこれに、出身大学とか趣味とか特技、資格なんかが続きそう。
-第4~6文目-
原文
その竹の中にもと光る竹なむ一筋ありける。
あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。
それを見れば、三寸ばかりなる人、
いとうつくしうてゐたり。
訳
ある日仕事で出かけた竹林の中に、根元が光っている竹があった。不思議に思って近寄って見れば、筒の中が光って見える。それを見たら三寸(一寸は約三センチ。なので、三寸は九センチ)ほどの人が、大変可愛らしくちょこんと座っていた。
解説
メルヘンチックな文章なんですが、冒頭の自己紹介がめちゃくちゃ現実的なのに対し、いきなりファンタジーの世界がこんにちは。
で、多分、皆ここで普通に受け止めるんだろうと思うんですが、どうしても私は疑問を抱いてしまう人間です。下手に想像力たくましいと言うか、妄想大好きというか。
だって良く良く考えてください。竹林で竹が光っていて、近くに行って見てみたらちょこんと9センチの女の子が座っていた。ほっこり出来る可愛らしいシーンなのは理解出来るんですが、かぐや姫。竹の中にどれだけ座っていたのだろうなぁ……って考えませんか?
幾ら身長9センチでも、竹の筒のなかって狭いですよね。窓もないし、多分、外に簡単に出入り出来る様な入り口なんかあるわけないし。その状態で翁を待つって、どれだけ辛かったのかなって。で、密閉空間でどうやって呼吸していたのかなって疑問もあるんですが、細かいことは突っ込んじゃいけないんですよね。宇宙人ですものね、かぐや姫!(ネタばれ)
で、その中をみれば……とあっさり書いてあるんですが、きっと雨露を凌ぐために、竹の中に居たんですよね。最初から上が無かったわけじゃないなら、翁がすぱんっ!! って、手に持っている斧か鉈で竹を切ったはず。
ちょっと、考えてみてください。今、どこでこれをあなたが読んでいるかは解りませんが、外でなくて、何かの建物の中だったとして。いきなり、何の脈絡も無く、自分の頭の上を巨大な刃物が通って、屋根とか天井とかを全部一気に取り払ったって青空が視界いっぱいに広がり、自分の何倍もの巨人が覗き込んできたとしたならば……ちょっとしたホラーになりません??
ホラーの代名詞。スティーブン・キングも真っ青な恐怖シーンだと私は思うんですが!!
後、数センチ翁の手許が狂ったらホラー通り越して、スプラッタですね……血で染まる竹取り物語。冒頭数行でお話終わっちゃいます。メルヘン台無し。ファンタジーは夢の世界では無く、恐怖への入り口でした。(某ネズミの国ですね、うん。)
で、続き。
-第7~10文目-
原文
翁言ふよう、
「われ朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて、知りぬ。
子となりたまふべき人なめり」とて、
手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。
妻の女にあづけて養はす。
うつくしきこと限りなし。
いと幼ければ籠に入れて養ふ。
訳
翁が言った。「私は、毎朝毎晩見る、竹の中に居らっしゃったから、この人が居ることが解った。私の子供となる運命の人なんだ」と独り言をぼそっ、と呟いて手の中に握って家に持ち帰った。奥さんに渡して、大事に育てた。子供はとっても可愛かった。物凄く小さかったので、籠の中に入れて育てた。
解説
大体此処までが、中学一年で習う部分なんですが……冷静に考えてみてください。翁って竹林で仕事してたんですよね。要するに今で言うなら会社です。職場です。会社で、仕事道具の中に小さな小人見つけて、
「君は僕の子供になるべき人だっっ!!!」
…………どこの危ない人だ……翁………
これ、普通の子供なら誘拐ですよね、現実的に考えたら。しかも、持って帰って奥さんに渡して育てさせるって、常識的に考えておかしくないですか?旦那さんが仕事に出かけて、帰ってきたらいきなり子供連れ帰って
「この子、育てといて」
って奥さんに渡されたら、今だったら夫婦喧嘩どころの話じゃないと思うんですけど。
「あなた、どこで浮気してきたのっっ!??」
な、二時間サスペンス劇場が始まってしまいます。
で、恐怖なのはそれだけじゃない。
全然喋らないし、大人しい、主役のかぐや姫。何で台詞無いのかなって、読んだ当初からずっと疑問だったんですが、考えると当然なんですよね。
だってね。
身長9センチですよ。9センチ!! 翁の身長を、当時の男性の平均が150センチぐらいと仮定して、
150÷9=16.666
約16倍もの身長をした人の手の中に入る。自分の身長の何倍もの高さの手の平の中で更に潰されるかもしれない恐怖もあるし、某人気漫画じゃないですけど、
食われるかもしれないっっ! 落ちたら死ぬっっ!!!
って考えてたなら。って言うか、そもそも竹を切り取られて、覗きこまれた瞬間に、「ひいっっっ!!!」って、怖すぎて悲鳴も最早出ませんよね。「かっわいいなぁ♪」と翁や嫗が思っていても、かぐや姫から見れば、「なんか巨人が喋ってる!!」でしか無いシーン。
そうやって考えると、
「ああ、かぐや姫。怖くて何にも喋れなかったのか……」
って、納得が。
【まとめ】
竹取り物語は、一応日本で最も古い物語とされています。
この後も魅力的、というか突っ込みどころ満載な続きがありますので、気になる人は教科書で続きをどうぞ。
特に五人の貴公子の話は、かぐや姫の容赦なさっぷりがホラーを通りこして、軽くギャグになってます。笑えないギャグだけど……(破産・浪費・詐欺・重傷・人生破滅のオンパレード……)
まっ、それはまた別の機会に。
此処まで読んで頂いてありがとうございました♪
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