「知の体力」解説のまとめです。(まとめを読む前に⇒解説 その1 その2)
【評論文の基本パターン】
-起承転結のうちわけ-
評論文の論理展開の基礎として、「起承転結」というルールを先ず、頭の中に入れましょう。
起⇒導入部分
承⇒問題提起
転⇒具体例
結⇒結論
というのが、ざっくりした説明になりますが、これをもう少し細分化します。
起⇒導入部分・一般論の呈示。皆が考えている、常識。思い込み、先入観に色とられた、当然と思っているものを呈示。
ここで、呈示される一般論は、のちに必ず否定されます。一般論は、叩きのめされる為のフラグだと思ってください。
承⇒問題提起・一般論に対する疑問。「これって、本当に真実なんですかね?」という疑問です。
この問題提起の解答が、筆者の主張となります。それも、ポイント。
大抵の要旨まとめは、この問題提起と解答をセットで書けば終わりです。
ポイントを絞ると、探すのも超かんたん。
転⇒具体例はおもに二つの部分で構成されます。
ひとつは、一般論の徹底的否定の具体例。
もうひとつは、筆者の呈示する主張を裏付けるための具体例。
具体例や例示というものは、根拠を示す為に出すものです。
ならば、一般論の否定の根拠。そして、筆者が主張したい考え方の根拠を示す為の具体例をひとつ。
ふたつで構成されている。これを知っておくと、混乱しなくて良いです。
結⇒結論。具体例で根拠を示した、筆者の考えを更に強調+補足。
大まかですが、この流れをしっかり把握しておくこと。
全ての論文で通用する、とは言い難いのが難しいところですが、かなりの論文はこの法則で書かれています。というか、ぶっちゃけテストで出てくる論文のパターンはほぼこれ。
覚えておくと、どこを読めばいいのかが解ってきます。
-評論を読み解くカギは、一般論をまず見つける事-
先ずは初級のポイントとして、「一般論」を探してください。
必ず否定されるべきものとして登場する一般論。
このメソッドを知っていると、細かな表現の部分に隠れている、否定的な書き方のパターンを見つけられるようになります。
読解能力が高い、と言われている人は、大量の読書を通じて、その表現のニュアンスに対するサンプル数が多いだけなんです。
要するに、圧倒的な量が、質を支えている。
それだけのことだから、才能でも何でもありません。(大量にこなせる、ということが既に才能だと言う事も出来ますが)
「そんな量、今から積み重ねられないよ」という意見も良く解ります。だったら、評論の書き方のシステムを理解しましょう。そして、一つ一つを積み重ね、読み方を覚える。
それを繰り返していけば、量など勝手に増えていきます。
やり方はいくらでもある。大事なのは、「今の自分に必要なこと」を見極めて、実行に移すことです。
では、本文のまとめにいきましょう。
【学問の意義を再認識する目的の内容】
高校生活最初の国語授業で取り上げられるこの作品。
筆者の主張は、「今まで君たちがしてきたことは、学習であり、これから君たちがしていかなければいけない事は学問である」という主張です。
なら、学問と学習の違いを、しっかりしておかなければならない。
-学問は学習ではない-
役に立つもの。何かしらの目的があって、している事=学習、です。
けれど、学問は学ぶことによって更に疑問が増えていくものを指します。
勉強すればするほど思うことなのですが、この世の中って知らない事の方が圧倒的に多いんですよね。本当に。
知れば知るほど、知らない事が多いことに気がついていく。
個人的に私は歴史が大好きな人間なのですが、知れば知るほど、「何でこんな選択をしたんだろう」「この人は、どうしてこんな不利なことをやってのけたんだろう……」ということを本当に考えさせられます。(個人的にフィンランドのリュティ大統領を調べた時は、こんな凄い人が居たんだと、教科書に載っていない存在に興味を抱いた切っ掛けの人です)
何故ならば、現実の世界は答のある「学習」の世界と違って、「正解」がない世界です。
何が「正解」なのかを探すのではなく、自分が選択したものを「正解」にするべく、乗り切る力。対処する力を養うのが、学問である。
何故ならば、学問は「解答」がありません。
解答らしく見えるものがあったとしても、それが次の疑問に繋がっていくのが、現実の世界です。
ならば、「役に立つ」ものではない。
-想定外の事態に対応するための頭の体力づくりが学問-
少なくとも、学問は「悩み続けるために」学ぶもの、という変な側面を持っています。
常に考え続けるために、学ぶ。学んで、自分に更に問いかける。
それは、自分で疑問点や問題点に気付き、それがどうやったら問題点をクリアできるのか。違う方法はないのか。皆がやっている方法が、本当に効率が良いのか。もっといい方法は無いのか。
そんなことを考え続けるのが学問です。
これは、考える力がついていきます。
そう。学問って、この「想定外の問題に対処できる思考能力、考え方の柔軟さ」を養うためのもの。
その為に必要なのは、まずは他者の模倣です。
他者とは、現代に存在する人だけではなく、過去の偉人達がどのように考え、どのようにその問題をクリアしていったのか。その過程を学び、自分の生活・人生に応用していく。
-常に疑問を持ち続ける事 次の疑問を見つけること、が課題-
これでいい。
これでもう大丈夫。
という世界の話ではなく、(それは目的達成の学習の話)学問はもっと次元の高いものである。
目先の利益に振り回されるのではなく、周囲の状態に常に疑問を持ち、どうやったらもっと上手くいくのかを考え、それを実行し、更に次に疑問を持つ。
それが、「知の体力」です。
これは、とても大変な作業かもしれません。楽ではないですよね、多分。(笑)
けれども、この思考することが、「面倒」ではなく、「楽しい」となってきた時、あなたは学問がどういうものか、理解できるのではないでしょうか。
試しに、皆が当然と思っていることに、疑問を持ってみてください。
そして、何でこれをしているのか。どうやったらもっと効率の良いやり方ができるだろうか。
例えば数学の問題を、参考書に書いてあるやり方で解けたなら、違う方法で出来ないか試してみたり、国語だったら評論家の意見を徹底的に批判してみたり。(根拠を持って、ですよ(笑))
解答は、ありません。
けれど、そうやって挑戦してみる。自分に問いかけてみる。
その作業の積み重ねが、思考という知力の体力を養ってくれる。
間違っても失敗しても大丈夫。だって、学習ではないのですから。
【テスト予想問題】
-考え方の訓練-
では、定期テスト予想問題です。
本文、第11段落「知の体力」とあるが、筆者が述べる「知の体力」とは、どのような力を指しているのか。「学習」と「学問」の違いに言及し、書きなさい。
ここで書かなければならないポイントは、
「知の体力とは、~~~~~~という力である」
という、基本的な文章をまず、形作ります。
そして、
「学習」=目標・目的を達成する、短期的利益の為に行うもの。
「学問」=学んで自分に問いかけるもので、長期的な未来の利益の為に行うもの。
ということと、
想定外の問題に自分なりに考え、対処する考え方の訓練。
という部分を入れなければなりません。
過不足なく、対比を用いて、解答を作ってみてください。
もう一つ。
本文全体を通して、筆者が考える「学問」とは何かを100字で書け。
まず、主語と述語を考えます。
学問とは何か、と聞かれているのだから、
「学問とは、~~~~~~考え方の訓練である。」
という外枠をきちんと作ります。
これをするかしないかで、解答の書きやすさと正解する確率がぐっと上がります。
殆どの生徒が、「取りあえず書くか……」と何の計画も無しに書いてしまうので、そうではなく、計算をきちんとしてから書くこと。
入れなければいけないポイントは、
・学問と学習は違うこと
・先人たちの思考方法を学ぶこと
・学問をすることで、想定外の事態に自分だけの力で対処する知の体力をつけられること
・未来を生きるためには「知の体力」が必要。
・学問とは、考え方の訓練。
これを過不足なく、入れてみてください。
解答は下に書いておきます。けれど、一度、是非自分で書いてみてください。
書かずに正解を見てしまうと、それこそ「学習」になってしまいます。間違ってもいいので、一度書いてみてください。その試しに書いてみる、という行動があなたの思考能力を上げる訓練です。
では、模範解答です。
「学問」とは具体的な目的のためにする「学習」ではなく、先人たちがどのように考えてきたかを学び、想定外の事態について自分だけで対処し、未来を生きるための「知の体力」をつける訓練である。
過不足なく入れるために、どこを省略し、どんな助詞を使えばいいのか。
自分で考えて、自分で試しに書いてみてください。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
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