伊勢物語 東下り 解説その3

伊勢物語

本文 黒太字 オレンジ色は文法解説部分。
〈訳〉現代語訳
〈文法〉品詞分解・説明
〈解説〉解説と言う名のツッコミ。背景、状況説明など
前の解説はこちら⇒解説その1 その2

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【本文 第3段落】

-1文目-

なほ行き行きて、武蔵の国と下総の国との中に、いと大きなる川あり。

〈訳〉
なおも、どんどん旅を続けていくと、武蔵の国と下総の国との間に、ずいぶん大きな川がある。

〈文法〉
なほ/ 副詞
行き行き/ カ行四段動詞「行き行く」の連用形
て/ 接続助詞

いと/ 副詞
大きなる/ 形容動詞ナリ活用「大きなり」の連体形
川/ 体言
あり。/ ラ行変格活用「あり」の終止形

〈解説〉
この大きな川は今でいう、東京都東部を流れる、隅田川です。
現代ならば日本の首都ですが、平安時代の関東は、ただの沼地です。人が住んでいない場所もとても多い、ド田舎。

そんな場所に、都中の都。京のど真ん中にしか住んだことのない、貴族がやってきた。

-2文目-

それをすみだ川といふ。

〈訳〉
その川をすみだ川という。

〈解説〉
こんな昔から、隅田川は隅田川という名前で呼ばれていたことを、古典文学が教えてくれています。地名って、凄いですよね。1000年続いて呼ばれているわけです。

-3文目-

その川のほとりに群れゐて思ひやれば、限りなく遠くも来にけるかなわび合へるに、渡し守、「はや舟に乗れ。日も暮れぬ。」と言ふに、乗りて渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。

〈訳〉
その川のほとりに集まり座って、これまでのことをいろいろと考えてみると、この上なく、京を離れて遠くまでやってきたことだなぁ、と嘆き合っていると、無情にも渡し守が、「早く舟に乗れ! 日が暮れてしまう。」と言うので、舟に乗って、川を渡ろうとするが、川を渡ればますます都から遠く離れてしまうと思うと、みんな、なんとなく悲しい気持ちになったのは、都に恋しい人がいないわけではないからであった。(愛しい人がちゃんといた。)

〈文法〉
群れゐ/ ワ行上一段動詞「群れゐる」の連用形
て/ 接続助詞
思ひやれ/ ラ行四段動詞「思ひやる」の已然形
ば、/ 接続助詞・偶然条件

限りなく/ 形容詞ク活用「限りなし」の連用形
遠く/ 形容詞ク活用「遠し」の連用形
も/ 係助詞※「ぞ・なむ・や・か・こそ」以外にも係助詞はあります。
来/ カ変動詞「来」の連用形
に/ 完了の助動詞「ぬ」の連用形
ける/ 過去の助動詞「けり」の連体形
かな/ 詠嘆の終助詞

わび合へ/ ハ行四段「わび合ふ」の已然形
る/ 完了の助動詞「り」の連体形
(※サ変の未然形・四段の已然形に接続する「り」は完了の意)

暮れ/ ラ行下二段「暮る」の連用形
ぬ。/ 強意の助動詞「ぬ」の終止形

乗り/ ラ行四段「乗る」の連用形
て/ 接続助詞
渡ら/ ラ行四段「渡る」の未然形
む/ 意志の助動詞「む」の終止形

なき/ 形容詞ク活用「なし」の連体形
に/ 断定の助動詞「なり」の連用形
しも/ 副助詞
あら/ ラ変動詞「あり」の未然形
ず。/ 打消しの助動詞「ず」の終止形

〈解説〉
文法がとてもややこしい部分ですが、言っていることはとても単純です。
都から遠くなる舟の中で、皆がなんかとても寂しくなった。それは、行けばいくほど都から遠くなり、遠くなればなるほど、さびしくなっていく。それを嘆き合っているのは、みんな、京の都に恋しい人がいたからです。
その人に会いたい。けど、みんなそれぞれ理由があって京の都を出てきた。だから、嘆きながらも進む船の上に乗りました。

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-4文目-

さる折しも、白き鳥の、嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。

〈訳〉
ちょうどそのような折(時に)、白い鳥で、くちばしと脚が赤く、鴨ぐらいの大きの鳥が、水の上で遊びながら、魚を食べている。

〈解説〉
そんな皆の瞳に映ったのは、白い綺麗な鳥です。
白く、くちばしと脚だけが赤くて、綺麗な鳥が、魚を食べている姿が見えています。

-5文目-

京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。

〈訳〉
京では見なれない鳥なので、みな誰も知らない。

〈文法〉
見え/ ヤ行下二段「見ゆ」の未然形
ぬ/ 打消の助動詞「ず」の連体形
鳥/ 体言
なれ/ 断定の助動詞「なり」の已然形
ば/ 接続助詞・原因

見知ら/ ラ行四段「見知る」の未然形
ず。/ 打消の助動詞「ず」の終止形

〈解説〉
京では、綺麗な鳥や動物は、和歌の中に詠みこむのが常識です。
そして、その為には名を知らなければならない。なので、先ず仲間内で誰か知っているかと問いかけ、誰も知らないから、知っている地元の人。渡し守に尋ねます。

-6文目-

渡し守に問ひければ、「これなむ都鳥。」と言ふを聞きて、

〈訳〉
渡し守に尋ねてみると、「これは都鳥だ。」というのを聞いて、

〈文法〉
問ひ/ ハ行四段「問ふ」の連用形
けれ/ 過去の助動詞「けり」の已然形
ば、/ 接続助詞・偶然条件

-和歌④-

名にし負はば いざこと問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしや

とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。

〈訳〉
都という恋しい言葉を名に持っているならば、さあ、尋ねよう、都鳥よ。私が恋しくて思っている人は、無事でいるかどうか、と。

と詠んだので、舟の中の人々はみんな泣いてしまったのであった。

〈文法〉
こと問は/ ハ行四段「こと問ふ」の未然形
む/ 意志の助動詞「む」の終止形

あり/ ラ変動詞「あり」の終止形
や/ 係助詞・疑問
なし/ 形容詞ク活用「なし」の終止形
や/ 係助詞・疑問

〈解説〉
この話の最後の和歌です。
「都」という名を持っている鳥に、『都の様子を知っているのならば、私たちに教えてくれないか?』と、尋ねている。

今も昔も一緒です。近くにいれば、傍にいる全てのものの価値は薄れていくけれど、離れていると、何もかもが懐かしく、大事に思えてくる。掛け替えのないものに思えてくる。

それを実感するような和歌に、皆が共感して泣いている、という場面です。

【第3段落まとめ】

東の果ての、下総の国までやってきて、こんなにも遠く京の都と離れてしまったなぁ、と振り返ることで、皆が帰りたくなる第3段落目。

そんな場所で、「都鳥」という鳥に出会い、都と言う名前に懐かしさが溢れ、『都の様子を教えてほしい』という願いを込めて、和歌を詠みます。

ええ? たかが、東京付近で?と思うかもしれませんが、そこは平安時代。

距離感は、今で言うのならば遠く離れた海外ぐらいの感覚です。懐かしい故郷に帰りたい。けど自分で決めて出てきたのだから、帰れない。

そんな気持ちが込められた和歌。

 

明日は、定期テスト予想問題です。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

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