ものとことば 解説その2

ものとことば
Maialisa / Pixabay

ものとことば 解説その2です。(解説 その1)

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【前回までのおさらい】

-大量のものとことばに囲まれている私たち-

普段意識していませんが、私たちの生活する世界は、ものと、それに対応する言葉に溢れています。

一見、一つのもの。例えば「自動車」などと言われているものでも、中身の部品は数千~数万で構成されていて、それにはひとつひとつ名前が付いています。(名前付いてないと、そもそも作れないし!)

更には「もの」だけでなく、私たちの感情や行動の様子、状態を示すものも、全て名前が付いている。

更には自然物まで合わせると、一体どれだけの数になるのか。まさしく、無限にものが存在し、ことばは新しいものが出来るたびに、見つけるたびに作られています。

-名付けられていないものはない-

この世に名付けられていないものはありません。

つまり、名付けられていないもの=人間にとって存在しないもの、ということになります。

言語という特殊な道具を使う生きものは、現在人間のみです。(動物の中にそれらしいものを使う存在はありますが、人間が認知できるという観点では、人間のみ)

私たちは、「解っている」「知っている」ありとあらゆるものを全て、名付けています。

森羅万象、全てのものには名前がある。

これが私たちの実感=一般論、常識ということです。

けれど、この名付け、という作業。

意外な一面を持っていますよ、というのが今日の解説部分です。

 

【第12~17段落】

「平和の象徴」「医者いらず」「イヴを誘惑した悪魔の実」「白雪姫を殺した毒」……さて、あなたの林檎のイメージは?

-同じものでも国や言語が違えば、呼び名が変わる-

多くの人は「おなじものが、国が違い言語が異なれば、全く違ったことばで呼ばれる。」という認識を持っている。(本文より)

 

これ、本当に当たり前のように思いますよね。

本文では、例示として「犬」が挙げられています。

日本語では、「犬」
同じ漢字を使う中国語でも、「狗(コウ)」と呼ぶ。

なら、アルファベット表記の西欧は一緒なんじゃないかと思えば、
英語はdog(ドッグ)
フランス語はchien(シアン)
ドイツ語はHund(フント)

と、結構違う。

というが、似ても似つかない発音のものばかりです。特に、ドイツとフランスなんてお隣同士なのに、何故にこうなった? と思うとちょっと面白いですよね。

中国で発生した漢字という表意文字を使っているのに、狗と犬で違うのも、面白いです。(そう言えば、今年は戌年でしたね。⇒知っていますか? 戌年の意味・由来)

私たちが英語を勉強する時、「英語でこれってなんて言うんだっけ?」というように、自分の目の前にあるものと同じものが英語圏の中にも必ず存在していて、きっと違う呼び方がされているんだ!!と無条件に思っていますよね。

この無条件に考えている事=無意識=先入観=大前提、です。

疑いもなく当然のようにそうしていて、「へっ? それ、当然じゃないの?」と思っていることに、人は疑問も何も抱かない。けれど、筆者はそこに違和感を抱くから、この文章を書いているわけです。

でも、これって本来はとってもおかしなことなんですよね。

例えば、「服」というものがあったとする。

「服」という概念。つまり、人間が着て、気温の上下や環境から自分の身体を守るもの、は確かに違う国でもあるでしょう。

けれど、例えば文化性が強いもの。「着物」とかになってくると、どうでしょうか。

国が違えば、多分、無いですよね。

言葉って、今みたいにグローバルな世界ではない状態から存在したものです。けれど、その時から、「自分の国にあるものは、他人の国でもあるはず」「言語が違っても、この『もの』を指し示す言葉は絶対にある!!」って、勝手に思い込んじゃっている。それを前提に、私たちは当然のように勉強しているんです。外国語を。

でも、無いものだって当然出てくる。

豆腐とか納豆とか醤油とか無いですよね。今だったらあるかも知れないけど、少なくとも明治時代とかには無かったはずだし、そんなものがあるなんて知られてないはず。

所変われば品変わる……はずなんですが、なぜか言葉に関してはこの認識はされずに勉強しちゃうんです。

だから、「それ、ニュアンス違うよ!!」って話になる。辞書的には正しくても、意味は通じても、なんかおかしい言葉になっちゃう。

だから、言語学者や哲学者たちはこれに気がついた。

もしかして、「同じもの」って思い込んでいるだけで、実は違うんじゃないのか。

いや、そもそも、「もの」があって「ことば」がつけられるのか?
もしかして、逆じゃないか? 

と、考え始めたわけです。

 

-ことばが逆にものをあらしめている-

それは、ものという存在がまずあって、それにあたかもレッテルを貼るような具合に、ことばがつけられるのではなく、ことばが逆にものをあらしめているという見方である。(本文より)

はい、きた!! 評論文につきものの、訳わかんない表現部分(笑)

もう、こういうのはひとつひとつ確認していくしかありません。辞書とお友達になるしかない(笑)試験中に出てきたら、自分の解りやすい言葉に言いかえる。

ということで、「あらしめる」は「在る」+「しめる」の複合語。

「在る」=存在する、ある、居る、ということ。
「しめる」=させる、という使役の意味の言葉。

ということは、「あらしめる」=「存在させる」という意味。

言いかえると、

ことばが逆にものを存在させている、という見方。というように、本文を言い換えられます。

はい、普通に解りやすくなった。

この作業は理解の為には必須です。分かんないものは、簡単に言いかえる。簡単に置き換えるとしたら、と考える。

すぐに浮かばなくてもいいです。やってみることが大事。

これを続けて行くと、解らない部分に引っかかった時に考えることが出来るようになります。読み飛ばさなくなる、ということ。理解への第一歩です。

さて、本文に戻って。

もの⇒ことば の発生順序ではなく、
ことば⇒もの の発生順序なのではないか、という疑問です。

 

-呼び名が変われば、ものも変容していく-

異なった名称は、程度の差こそあれ、かなり違ったものを、私たちに呈示していると考えるべきだというのである。(本文より)

これ、引っかかる書き方ですよね。

抽象的すぎて一瞬止まってしまうのですが、具体例を考えてみましょう。

例えば、「商品名」。

コピーライティングの世界で有名な話なのですが、全く商品の質は変わらず、パッケージと商品名。つまり、「なまえ」「ことば」「よびかた」を変えただけで、前年比4倍の売り上げ。現在まで累計で約10倍になったというもの。

何か解りますか?

それは「鼻セレブ」

前の商品名って、「モイスチャーティッシュ」だったらしいです。

「モイスチャーティッシュ」と「鼻セレブ」

中身は全く一緒です。つまり、商品の改正はしていない。変えたのは、名前だけ。商品名だけ。

でも、私たちが抱くイメージはどうでしょうか?

私たちに呈示する(本文)=私たちが抱くイメージです。

異なった名称は、違うイメージを私たちに呈示してくる。そんなイメージを、印象を私たちに抱かせるのです。

ことばの力って、凄い。

中身一緒なのに、言い方や呈示の仕方で、全く違う評価を受けると言うことです。

「ことば」が「もの」を存在させている。

つまり、ことばを使うのは、私たち人間です。その人間が抱くイメージの塊が、ことば。名前、名付けです。その名で呼ばれること。そのことばで認識することで、ものの価値や意味合いも、変わってきてしまう。

やっていることや存在しているものは一緒なのに、抱くイメージがことばやキャッチフレーズで全く異なってきてしまう。

だからこそ、キャッチフレーズって物凄く人間心理の塊のようなものなんですよね。

-唯名論的な考え方-

私は純粋に言語学の立場から、唯名論的な考え方が、言語というもののしくみを正しくとらえているようだということを述べてみようというわけである。(本文より)

「ものが先に存在」⇒「名付けられる」のが、実念論。
「名付けが先」⇒「その名前が抱くイメージ通りのものとして認識されていく」のが、唯名論。

筆者は言語学者なので、この唯名論の立場から、「ことば」とはどういうものなのか。それが「もの」にどのような影響を与えていくのか。

それを説明したい、と宣言しているわけです。

私たちの一般論は、ものが存在して、それに相応しい名前が名付けられて認知する。という順番のはずです。

けれど、「ことば」によってレッテルが貼られることによって、「もの」自体も変わっていくのではないか。それだけの影響力が、「ことば」には在るのでは……

 

【今日のまとめ】

-同じものであったとしても、呼び名がものをイメージを変容させていく-

私たちの世界は、「もの」と「ことば」で溢れている。

でも、それを名付けているのは人間であり、「ことば」によって名付けられたものは、私たちにさまざまなイメージを与えてくれます。

商品名を変えただけで売り上げが倍増したものがあるように、「ことば」は私たちのイメージを変える影響力がある。

ならば、その影響力で「もの」自体の性質まで変えてしまうのではないか。

そんな疑問の続きは、また明日。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

 

続きはこちら⇒ものとことば 解説その3

 

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