日本には、世界でも珍しい四季があります。
春夏秋冬。これだけはっきりと季節が分かれていて、それを心ゆくまで楽しもうとする行事やイベントが盛りだくさん。
更には、季節ごとに咲く花や自然を愛す言葉が。和歌や古典には溢れています。
【現代と違う季節区分】
その季節の区分なのですが、古典の世界と現在では、少々勝手が違います。古典を読む上で、この季節感はとても大事。
どう現代の季節と違うのか。
そして、古代と現代でどうして変わってしまったのか。少し、歴史を振り返ります。
-古典の春夏秋冬は、三か月ごと-
古典の世界では、
春 | 1月~3月 |
夏 | 4月~6月 |
秋 | 7月~9月 |
冬 | 10月~11月 |
という風に区分されています。
厳密に三か月ずつ。そして、現代とは、二か月から三カ月ほどずれています。
今現在一月ですが、これで春と言われてもちょっと、「えっ?」って感じですよね。
更に、ここに24節季という細かい区分が存在します。
【春の24節気】
月 | 異名 | 24節気 |
1月 | 睦月(むつき) | 立春(りっしゅん) 雨水(うすい) |
2月 | 如月(きさらぎ) | 啓蟄(けいちつ) 春分(春分) |
3月 | 弥生(やよい) | 清明(せいめい) 穀雨(こくう) |
一か月の間に二つずつ配分されている24節気。左から、月、異名、24節気となります。
現在で馴染みがあるのは、立春と春分。その他は、殆ど一般的に知られていませんが、カレンダーに小さい字で乗っている場合もあります。
1月に立春? という風に思われるかもしれませんが(現在は、2月4日)、古典の細かい知識というのは、意外に読解を助けてくれたりします。
立春は、春の訪れを告げる日です。
なので、1月1日に、迎春、だの新春、だの、「春」という字の言葉が使われるのは、この古典の季節区分の立春の名残が残っているからです。
-昔の誕生日は、誰もが1月1日-
そして、誕生日という概念も古典では存在しません。
皆、1月1日に一斉に年を取ります。
星占いとか、誕生日プレゼントとかを思いっきり無視した考え方なのですが、人々に日々のカレンダーという意識が芽生えるのは、太陽暦が入ってきた明治維新から。
平安から鎌倉、室町、江戸は、朝廷や幕府が出したこの24節気の区分で、一年の感覚を知り、季節の移り変わりを感じていたのです。
だからこの24節気。農業と関わる言葉が非常に多くなっています。字の読めない農民に対しての、季節を伝えるのにちょうどいい区分だったのです。
【夏の24節気】
月 | 異名 | 24節気 |
4月 | 卯月(うづき) | 立夏(りっか) 小満(しょうまん) |
5月 | 皐月(さつき) | 芒種(ぼうしゅ) 夏至(げし) |
6月 | 水無月(みなづき) | 小暑(しょうしょ) 大暑(たいしょ) |
現代の6月は梅雨であり、長雨が続く時期に、何故水無月(水が無い月)と書くのか、不思議な人も多いと思うのですが、この区分を見ると納得ですよね。
6月は夏のピークから終わりにかけて。
つまり、夏の一番暑い8月中旬から9月頭の時期を表しています。
なので、かっらからで雨が全然降らない、夏の暑さがピークに辛い時期。だからこそ、一雨欲しい時期、それぐらい渇いているということで、水無月、という名前が付きました。
-五月雨は夏の季語-
五月雨、という言葉は五月という月の名前が入っているので、うっかり今の感覚で春、と思いがちなのですが、五月は古典の世界では、夏です。
そして、暑さがピークになる前の雨、ということは、現在の梅雨。
五月雨=梅雨の雨が酷い時期の事。
なので、松尾芭蕉の「奥の細道」の有名な俳句。
五月雨を あつめて早し 最上川
の俳句の意味は、
となります。
ちなみに、五月晴れは古典では梅雨の合間の晴れ間のことを言います。今は、五月の良く晴れた日の意味しかありませんが、このような古今異義語は要チェック。
知っている、と思っている言葉が、自分の知識とはずれている時が、何よりも恐ろしい時です。
-6月30日にある夏越の祓-
6月30日は、一年のちょうど半分。
ということで、これまでの半年間の祓をする風習があります。
いまでも、神社などで行われるている行事。半年間のけがれを落とし、残りの半年を無事に過ごす意味合いもあります。
そして、月の最後の日のことを、それぞれ晦日と言います。
なので、一年の最後が何故大晦日になるかは、最後の月の最終日だから。
【秋の24節気】
月 | 異名 | 24節気 |
7月 | 文月(ふみづき) | 立秋(りっしゅう) 処暑(しょしょ) |
8月 | 葉月(はづき) | 白露(はくろ) 秋分(しゅうぶん) |
9月 | 長月(ながつき) | 寒露(かんろ) 霜降(そうこう) |
7月の異名が文月になった由来は、この七夕の日に短冊を書いたことに由来するという説もあります。7月の文月の行事は、なんといっても7月7日の七夕です。
8月の葉月は、葉っぱが色づいて散る光景。つまり、紅葉の時期であるということ。
仲秋の観月。いわゆる仲秋の名月は、8月15日に行われていた宮中行事。今では、お盆や終戦記念日のイメージが強い日ですが、古典ではお月見の日です。
9月の長月は、8月15日の仲秋の名月からちょうど一か月後。満月をもう一度楽しむ十三夜という名月観賞の行事がありました。
秋はやっぱりお月見の時期なんですね。
-ちはやぶる~は秋の名歌-
百人一首の代表歌であり、某漫画のタイトルにも使われた、ちはやぶるの歌。
この歌は秋の紅葉に彩られた風景を読んだ歌、とされています。
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
竜田川を真っ赤に染め上げているのは、紅葉です。紅葉は秋の季語。ただでさえ綺麗な紅葉の時期の山で、紅葉が川を彩るように染め上げている。なんて綺麗なんだ。こんな風景、神代の伝説の時代でも聞いたことが無い、という意味。
伝説以上に綺麗だなと思う風景って、凄いですよね。
和歌の訳が苦手な人は、どうしても直訳をしてしまう人です。
和歌は、直訳ではなく、抽象的に書かれているから、その光景がどうだったのかということの感想が書かれていない。その時の気持ちをたすようにしてみると、一気に
【冬の24節気】
月 | 異名 | 24節気 |
10月 | 神無月(かんなづき) | 立冬(りっとう) 小雪(しょうせつ) |
11月 | 霜月(しもつき) | 大雪(たいせつ) 冬至(とうじ) |
12月 | 師走(しわす) | 小寒(しょうかん) 大寒(だいかん) |
さて、冬の24節気です。
10月の神無月は、10月に出雲大社で神様の会議があるので、全国から神様が出雲に行ってしまい、いなくなるので神無月。
出雲地方だけ、神有月と書きます。是非、訪れるのならば10月に行きたいですね。
11月の霜月は、霜が降り始める月。
そして、12月の師走は、師=お師匠様の意味。
いつも偉そうにしているお坊さんやお師匠様ですら、忙しくて駆け回るほど、年末は忙しいことから名づけられた異名。
今現在は、1月20日~の大寒の時期。
33年ぶりに低気温注意報が発令されるほど、2018年の大寒。一年で一番寒い時期は、とても辛いものとなりました。
けれど、もうすぐ2月4日。春はすぐそこです。
【まとめ】
古典の異名と季節の違いを説明してきましたが、知識は知っているだけではもったいないです。
是非、知った知識を和歌などで見つけたり、季節を意識して古典の言葉を読んでみたりすると、頭の中に定着します。
覚えようと思うと、逆に離れていくのが知識。
何度も繰り返し読むことで、簡単に頭に入るので、意味をひもづけして覚えてください。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
明日は節分を取り上げます。
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