これを押さえて準備をしよう センター評論問題の必須パータン2つ その2

センター試験 テスト対策
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こんにちは、文LABOの松村瞳です。

昨日に引き続いて、センター試験対策。評論パターンの解説です。

土台がしっかりしていないと、上に何を積み上げても無駄。

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【演習よりもまず理解】

評論って練習が凄く大事だと言われていますが、個人的に逆だと思っています。

数学でも、定理が解っていないし、基礎が出来ていないのに、演習したって無駄ですよね。現代文もそうで、徹底的に解らない文章に向き合い、理解するまでそこから動かない粘りがやっぱり必要です。逆に言えば、その粘りがあって、一つの物をゆっくり理解できるだけの耐久力が付けば、演習を重ねてもOK。

まず、徹底的に理解できるまで、読み込む。解らないところは、理解できるまで説明を受ける。質問する。接続詞を確認する。

自分の思い込みや先入観、解ったふりは、点数が欲しいなら捨ててください。

では、パターン2です。

統計的に、このパターンになった場合、平均点が大幅にさがります。だから、こっちが出たらラッキーですね。皆が下がる中、貴方だけが点を取れる。

それぐらい、自信満々に問題を読んでください。逆に簡単だったら、「ちっ!」って舌打ちするぐらいが、ちょうど良いです。

間違っても、逆にならないように(笑)

【パターン②】

では、パターンの②。①は「常識を覆す型」でした。

②は、「謎を解明する型」です。

某国民的漫画の、「頭脳は大人 身体は子ども」な名探偵の決め台詞じゃないけど、「真実はいつも1つ」と言わんばかりに、謎に挑戦し、それを解明していくパターンです。

ひとつの事に徹底的にこだわり、様々な歴史的文献や実験結果から解析、分析、そして筆者の推理、推論を加えて、論を形成していく。

まとめると

①筆者が気になっている事柄(事件や実際の現象など)を取り上げる。

②何故そういう形や思想の型になったかを、疑問視する。(問題提起)

③事柄に対する歴史を紐解く。

④謎が解けそうな根拠や原因を列挙。

⑤筆者なりの解答。(推論も含む。確定的な解答ではない非常にあいまいなものもあり)

な、順番となります。

【パターン②の罠】

「えっ? じゃあ、結構簡単なんじゃないの? 一個しか話題でないんだし」

と、思いますよね。

謎の解明なんて面白そう。パターン①よりも、話として推理が入るから、きっと興味深く読めるんじゃないかなと。

でもね、問題はこの、筆者が取り上げる事柄にあります。この、「謎に満ちた事柄」というのが、身近なものだったら、まだ良いでしょう。(スマホとか、流行とか、SNS文化とか)

ところがね、そんな生易しい、身近なものを評論家が選ぶはずがないんですよ。はい。

大抵は、読み始めた瞬間に、「はっっっっ??? それ、何????」と首をかしげるものが出てきます。はい、真面目に。

音楽なら、モーツァルトやベートーヴェンのようなクラシックを聴いたことがない人でもわかるような作曲家ではなく、シェーンベルクやらジョン・ケージやらが出てきます。(名前だけでピン、ときた人は凄い!)

絵画だと、ピカソやらゴッホやレオナルド・ダ・ヴィンチやらではなく、ダリやジャコメッティやらベン・シャーンやらが出てきます。

センターの歴代の問題には、冒頭の文章を読んだ瞬間に、「はぁっ???」と疑問が頭を飛び交うやつも多く、読むのが苦痛になってくるタイプが殆どです。

けど、このパターン②

芸術論や分析論全般に言えることなんですけど、言っていること。内容は、超かんたんであることがほとんどなんですよね。

更に言うと、本文の読解レベルが高いから、選択肢が超かんたん。ひっかけも何もなく、あっさり選べる物ばかりで構成されているので、パターンを理解すると、ほんとうに楽です。

【パターン②例示】

では、例示を挙げましょう。

近年のセンター試験、本試験の中でぶっちぎりで難しかった、平成25年度(2013年度)の評論文。小林秀雄の「鍔」です。

鍔。読み方は、「つば」

日本刀の、刀剣の柄と刀身との間に挟んで、柄を握る手を防護する部位、もしくは部具の名称です。

私自身、初めて読んだ時、「はっ?? 鍔って、あの鍔???? 実際に見た事って、あったっけ??」と、軽くパニックになりました。受験生たちは、本当に凄まじいパニックだったと思います。ええ、本当に。

容赦ないなと冒頭数行で難しいことを確信したのですが、冷静に読み返すと言っている事は非常に単純。

その理解で設問を見ると、「あっ、なーんだ。こういうことか」というぐらい、単純です。単純すぎて、びっくりするぐらいです。

分解すると、

①と② 鍔って、どうやってあんな形になったんだろう。謎だよね。
と、説明しておいて、いきなり鍔の歴史の説明を開始。

この論文に関しては、①と②が同時に行われています。

 

③ 歴史的に見ると、乱世の時代に鍔は今の形になっていった。人は、動乱の時代だからこそ、人を殺さなければならない日常だからこそ、そこに持ち込む武器に、文化を入れ込む。それによって、平常心を保とうとでもするかのように。

ここで、筆者の推論が多少入った文章が続きます。
人を殺す殺傷の武器であるはずなのに、何故鍔はこんなにきれいな透かしが入った形をしているのか。と、疑問に思っているんですが、この手の論文の特徴でもあるんですけど、答えがその直後に書かれちゃってます。

どんな時でも、人間はその場所に文化を持ち込もうとする。要するに、色んなものに工夫を加えていく。それって、何でだろうね。多分、乱世だからこそ、心の平安を求めたからじゃないかな。美しい物を見ると、人の心は和むから。

だから、世の中が混乱して、人を殺せと要求される時代に、一緒になって狂えれば楽だったんだろうけど、人間そう簡単に狂えない。だから、どこかに平常心を残しておきたくて、色んなものを、特に身近にあるものに工夫を施したんだろうね、と。

④鍔にはいろんな伝説が残されているけど、そういうのは別に興味はない。興味があるのは、どうして鍔に彫りこむものに仏教的な経文を多く掘ったか、という理由だ。きっと、そこに書かれている経文の内容を理解していたのではなく、其の当時に流行っていた琵琶の音楽や祭りなどで耳にしたものを、感覚的に直感で良いなと思って、武士達は掘ったのではないか。

脳筋の武士達が、仏教経典を理解していたとは考えられない。きっと、感覚的に良いなと思ったものを掘っていたのでは? という、筆者の推論が、琵琶の演奏を聴いたエピソードと相まって、展開します。

頭で理解している、のではなく、感覚的に良いなと思い、日常的に接して身近に感じているものを掘る題材として選んだ、というのは、ちょっと理解できますよね。

例えば、今の高校生がスマホのケースに選んだものに、ちょっとした英語の格言が書かれていたとして、500年後の人達が「当時の高校生は、きっとこの英語の格言に深く興味を示すぐらいに外国語文化が浸透していたはずだ」とか分析されたら、「いやいやいやいや!!単にデザインが綺麗で気に行っただけだから!!」と反論したくなりますよね。筆者がいいたいのは、そういうこと。

⑤鍔に透かしが入ったのは、土にまかれた種が水を吸って発芽するのと同じくらい、強度を増す為の自然な成り行きだった。その文様がさすのは、頭で理解する意味合いなどではなく、当時生きた武士達が感覚的に良いと感じたものを掘っただけにすぎない。

補足(蛇足?)桜を見に行った筆者。そこで、白い鳥の群れが飛んでいく見事な光景が目に焼きつく。
ああ、今自分が乱世に生きている武士で、鍔を刀匠に頼むのならば、きっと今見た白い鳥の羽ばたきを掘ってくれと頼むだろうなぁ。それぐらい、素敵な鳥たちだった。(この部分で混乱した受験生は数知れず……過去問に挑戦する人達も、もうしちゃった人も、参考にしながら読み直してください。こんな単純なことしか言ってないんです、この文章)

な、感じで書かれています。

一つの例示がレベル高すぎて、放り投げたいレベルだけど、理解できるとそんなに嫌な問題でもないです。

【評論はコロンブスの卵】

いきなりですが、コロンブスの卵って逸話、知ってますか?

新大陸を発見して、一躍人気者になったコロンブスに、ある貴族が突っかかったんですね。

「新大陸なんて、西に向かってただひたすら進んだだけだろう? 簡単で、誰だってできることだ」と。

それに対して、コロンブスは、テーブルの上にあるゆで卵を一つ取ります。

「これ、立たせてみてください」

「はっ? そんな簡単なこと……ぐっ、で、出来ない」

ころんころんと転がり続ける卵に、貴族たちは四苦八苦。そこでコロンブスが、すっ…と手を伸ばし、手に持った卵の底をこんこんとテーブルに打ちつけて、ヒビを入れます。で、立てた後。

「新大陸発見もこれと一緒です。解ってしまえばやり方は簡単だけど、誰かがやってみせるまで、誰もできない」

思いついたことを誰よりも早く実行することが大事、という逸話ですが、この解ってしまえばとても簡単というのは、評論と一緒なんですよね。

分かっちゃえば、簡単。

まず、そこを頭に入れてください。難しいことなど何も書いてないんです。簡単です。書いてあることは、とても単純な事なんだと、まず自覚する。そして、複雑にしているのは、筆者の書き方の意地の悪さと自分の視界が「難しい物なんだ」という意識の為に、曇っているだけのことです。

コロンブスが卵の底にヒビをいれたように、簡単に、単純に、読み解いてくださいね。

ここまで読んで頂いて、ありがとうございました。

 

コメント

  1. 田中ゆり より:

    大変興味深く、参考になる記事をありがとうございます。
    しかしひとつ疑問に思う部分がありまして、パターン②の解説の文章のなかの名探偵の台詞で、「信実はいつもひとつ」とありますが、「信実」ではなくて「真実」ではないでしょうか。
    感じの間違いくらいでいちいち言わなくてもいいかと思いましたが、一応現代文の記事だったので気になってしまいました。

    • 田中ゆり より:

      「感じ」ではなく「漢字」でした……。
      打ち間違える事ってよくありますよね………。

    • 文LABO 文LABO より:

      コメントありがとうございます。
      すぐ直しますね。
      気付けていない自分の間抜けさに、冷や汗です。(笑)

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