枕草子、「宮に初めて参りたる頃」解説、その4。
今日は、教科書掲載の最後の部分。第4段落です。
この枕草子。今回、解説を書いていて本当に思ったのですが、センター必須の文法が満載の文章です。逆にいうのならば、この部分の文法をほぼ完璧に理解することが出来れば、センター楽勝。文法で迷うことは、ほぼ無いと言っていいほど、様々な文法が網羅されています。
文法の苦手な人には、「げっっ!!」っていう内容かもしれませんが、話の簡単さに比べて、文法は可愛くない。内容だけ覚えてテストを受けようとすると、とても痛い目をみる部分でもあるので、「話の内容だけ覚えおけばだいじょうぶ、大丈夫♪」と思ってると、「だと、思った?」と、とんでもない問題に苦しめられます。観念してゆっくり見てきましょうね。
【第4段落】
-1文目-
宮は、白き御衣どもに、紅の唐綾をぞ上に奉りたる。
(訳)
定子様の着物は、白い衣の上に紅の唐綾をお召しになっている。
※はい。伊周の着物の説明をした後は、今度は定子の着物の説明です。
白い着物は、今で言うのならば白い薄手のシャツの様なもの。その上に、目にも鮮やかな唐から渡ってきた、とっても高価な紅の着物を合わせている。
なんて素敵なの!! と、感激して興奮気味にまくしたててる感じです。今で言う間ならば、超高級海外ブランド品だぁ~!!! と、テンションが上がってる感じです。意外に、ミーハーな清少納言。(笑)
(文法)
ぞ/ 係助詞 強意 (結びは連体形)
上/ 名詞
に/ 格助詞
奉り/ ラ行四段「奉る」の連用形
たる/ 完了の助動詞「たり」の連体形(係助詞 結び)(連用形接続)
※奉る、は、尊敬語で、~をお召しになる、の意。
(謙譲語で、~し申し上げる、の意もあり)
真逆な尊敬語と謙譲語の両方が入った、ヤヤコシイ敬語。けど、誰が主語かを考えると、すんなりいきます。この場合は定子だから、尊敬語としか考えられない。
「たり」は上の言葉が連用形だと、完了。体言接続だと、断定です。
接続が意味を決定してしまうので、動詞の活用はしっかりと復習しましょうね。
(参照⇒今からでも間に合うセンター対策 解る古典文法解説 基礎編 その1)
-2文目-
御髪のかからせ給へるなど、絵に描きたるをこそ、かかることは見しに、現にはまだ知らぬを、夢の心地ぞする。
(訳)
その衣の上に、定子様の御髪の毛が垂れかかっている有様は、絵に描いたものであったのならば、このような光景は見たことがあったが、現実にはまだ知らなかったので(見た事などなかったので)、まるで夢を見ているような気がしてきてしまう。
※白の上に目にも鮮やかな紅。そして、その上につややかな黒い髪の毛がかかっている。定子の黒髪が映えるように、着物の色を選んでいるのが解る配色です。
この時代、禁色(きんじき)というものが存在しました。ある一定以上の高貴な人々が身につけることを許された色。許されない人々が付けた場合、罰を受けるほどに、色の力は強いものでした。
代表格は紫。そして、この定子が身に付けている紅も、禁色の一つです。
だからこそ、清少納言は、紫の指貫に、紅の唐綾!! こんなの、絵物語しか見たことないし、実際に現実できている人が二人も居て、その二人が話している光景なんて、見たことないよー!! と心の中で嬉しくて悲鳴を上げているのです。
まぁ、確かにテンションあがるよね。そりゃね。世の憧れの頂点ですからね。
で、ここら辺にくると、ぐっと敬語が少なくなります。読みやすいですよね。それもそのはずで、敬語がない=身分の高い人の話では無い=筆者の感想、であることが多い。特に随筆である枕草子は、敬語が外れていたら、主語が筆者なのかな? と考えてください。その他の女房達の場合もありますが、殆どは清少納言です。
敬語があるかないかで、高貴な人達がいるかどうかも、判別できるようになるととても楽ですよね。参考にしてください。
(文法)
かから/ ラ行四段「かかる」の未然形
せ/ 尊敬の助動詞「す」の連用形(未然形接続)
給へ/ ハ行四段動詞(用言) 尊敬 「給ふ」の已然形
る/ 完了の助動詞「り」の連体形(サ変の未然形、四段の已然形接続)
※はい、テストで出す為に書かれた様な文章です(笑)
まず、「せ/給ふ」の尊敬+尊敬コンビ
更に、その下。特殊接続の完了の「り」が来ているという……これで私がテスト作るんだったら、此処は絶対に出しますね。色んな形で。
ぞ/ 係助詞 強意 (結び 連体形)
する/ サ変動詞「す」の連体形(係助詞の結び)
※「する」とくると、「す」と「る」に分けたくなる人もいると思うのですが、これは、サ変動詞の連体形です。色んな選択肢があるなかで正解を選び出す為には、地味な係助詞の結びや、動詞の変形表を確認するのが大事です。
【まとめ】
枕草子はどこもかしこも文法が鬼です。
なんか、清少納言も1000年後の高校生にここまで自分の文章が読まれるとは思っていなかったでしょうが、何故か知らないけど入試必須の知識がテンコ盛り。
それ以外にも、文法の基本が詰まっているので、じっくり向き合ってみてください。
ではでは。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
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