こんにちは、文LABOの松村瞳です。
昨日、論語で限界を作るな。自分の限界を設定するなという話をしました。失敗する人の考え方 無意識に決めてしまう自分の限界~古典解説『論語』~冉求曰く、子の道を説ばざるに非ず~
けれど、高すぎる目標を設定してしまうと、人間どうなってしまうのか。もう今年も半分以上過ぎましたが、新年の抱負は達成できたでしょうか? 勉強を始めると決めた目標点数を、クリアすることが出来たでしょうか。夏休み前の勉強計画は?
時に人間は、初めから達成出来ないと解っている事を目標に据える時があります。逆に言うのならば、高い目標を掲げてしまうと、行動する気が無くなってしまう、とも言えます。
何故そんなことが起こるのか。そして、防止策は何なのか。
限界を作るなと言っておいて、高い目標を掲げると失敗するってどういうことだ。矛盾していないかと思う方がいらっしゃるかと思いますが、人間の精神的なメカニズムの問題です。両方とも間違っていませんし、矛盾もしていません。
それをお話いたします。
【高過ぎる目標は叶わない理由】
例えば、今まで平均点数が30点前後しか取れていない人間や、偏差値が30前後しか取れていない人間が、いきなり上位を狙う目標を掲げたり、30分しか勉強をしたことの無い人間が、いきなり5時間や6時間やろうと思ったりしても、土台無理です。
人間は急に変われない。変わるには、時間と地道な努力が必要です。けれど、人は変わろうとする時、決心した瞬間。次の日から急に効果が出ることを期待してしまいます。
希望的な未来を願い、「よし、今年こそ変わるぞ!」と思う。そうして、高い目標を掲げて、宣言もします。口に出して形にすることによって、よりその願いが強化されるから行動しやすくなるはずなのですが、どうしてか、新年の抱負は叶わない確率の方が高くなります。
覚えが無いでしょうか。
勉強もそうですが、資格試験やダイエット。何かしら、自分が取り組んでいるものや努力を続けているものは特にそうです。「やるっ!」と決めた筈なのに、途中で挫折してしまい、結局やらなくなってしまったことは、どれだけ有るでしょうか?
続けようと思っていた筈なのに、何時の間にか駄目になる。「ああ、また駄目だった」と溜め息を吐いた経験。有りませんか?
【どうにでもなれ効果 ~一度失敗するともっと失敗したくなる~】
ニューヨーク市立大学とピッツバーグ大学の心理学者と依存症研究者が行った面白い実験に、禁酒やダイエットに関するものがあります。禁酒をしている人やダイエットをしている人に、わざと失敗したように感じさせる体験をさせ、その後。彼らがどういう行動を取るかを調査したものです。
お酒は、禁酒を心がけている人が、年末などのパーティなどでどうしても飲まなければいけない時に、次の日の朝の気分を報告させるように。
そしてダイエットでは、わざと本来の体重よりも2キロ多く表示される体重計に乗ってもらい、その数字を見て貰う。
実験の目的はここからです。自分の努力の試みが脆くも崩れ去った後。人はどういう行動を取るのか。それを調査するための、体験です。
実験の結果は驚くべきものでした。
本来ならば、二日酔いの日はお酒とは違うものを飲んで体調を整えるべきです。ダイエットもそう。体重が増えている、と解ったならば、生活の見直しをするのが一番です。
けれど、彼らが取った行動は、何故か事態がより悪くなるものでした。
お酒の量をコントロールしようとしていた人達は、その日の夜も、また次の日も深酒をしてしまいました。
ダイエットを試みていた人々は、増えた体重に絶望し、罪悪感に苛まれ、憂さ晴らしにやけ食いに走ってしまうのです。
それこそ、「どうにでもなれ!」と羽目を外して、その事実に落ち込み、自分を責め、その罪悪感から逃れようとさらに羽目を外す、という悪循環にはまってしまうのです。
【自己嫌悪が悪循環を産み出す】
誰もが成功を望んでいます。失敗を望む人などいません。そして、高い目標を掲げるのも、素晴らしいことです。
けれど、同時に私達は自分に期待し過ぎてしまう、という欠点も持ち合わせています。
自己の成長に限界を設ける必要は有りません。どれだけ伸びるか、未来は決まっていないのだから、限る必要は全く無い筈です。けれど、私達がすぐ変われる存在でないことも、同時に事実です。
今日は昨日の続きであり、明日も同じ様な日々が続いていきます。今日やってしまったことは、明日もやろうとしてしまう。脳はサボり魔です。変わることが大っ嫌いで、同じ様な行動をしたがります。
だからこそ、高い目標を掲げ、急激な変化を求めたとしても、すぐには変われません。そして、変われない事実や失敗を自己嫌悪してしまうと、人間は気晴らしをしてしまいたくなるのです。
最も簡単で手っ取り早い気晴らしは何でしょうか?
それは、悪循環の最たるもの。ダイエットなら、ポテトチップスのドカ食い。勉強なら、ゲームやテレビ等の娯楽。更にだらだらしてしまい、何もしないこと。お酒なら、深酒や連日の飲酒など、自分の望まない方向に自分を向けてしまうのです。
一旦悪循環に嵌ると、地獄です。
例えば、twitterやFacebook等のSNSをもう見ないようにしようと決めたとしても、やっぱり気になって見てしまい、気が付いたら1時間も過ぎてしまっている。それに気付いて、「ああ、もう止めよう」と思うのですが、自制が利かない自分を責め、罪悪感が沸き、その罪悪感から逃れるために、またSNSを見てしまう。
延々とそうやって気分の晴れない行動を続けてしまい、結果、貴重な時間という財産を無駄にする。そして、残るのは自己嫌悪だけ。その自己嫌悪がさらなる悪い未来を引寄せるという、ホラーとしか思えない様な事態がやってきます。
【成長は二次関数であると知っておく】
これは、生徒の成績の伸びを見ていると解るのですが、私達は一次関数。つまり、直線で成長すると思いがちです。努力した分、すぐ効果が出ないと諦めてしまいますが、実際の成長は一次関数では伸びません。点数は二次関数。曲線で伸びていきます。最初はまるで何も変化が無い様に感じますが、ある閾値を越えた瞬間。急激な伸びを見せます。ただ、この閾値を越えるまでが大変。殆どの変化が無いから、諦めて全部やめたくなってしまいます。
そして、「どうせ自分は駄目なんだ」と自己嫌悪して、望む方向とは全く逆の行動をとりたがる。悪循環の始まりです。
全く変化が無い場合。もしくは、そう思いこんでしまう様な時期で有ったとしても、悲観することは全く有りません。今は、成長に備えてじっと力を蓄えている時期なんだと自分に言い聞かせてください。
停滞しているのは、成長している証拠です。何もしていないのだったら、落ちていく筈です。だからこそ、動かない事実をきちんと受け止めてください。
成果が出なかったり、決めたことを出来なかったりすることも、人間なんだから、ある。私達は機械では無い。完璧ではなく、間違いを犯す時もある。その事実を認めると、自己嫌悪が和らぎます。そして悪循環から抜け出せる一歩を踏み出せるのです。
【目標は高く、現実的な作業は1パーセントの変化】
自分の能力を限ることは有りません。きちんと頑張ることは、とても大事です。けれど、高い目標は時に人を挫折させると言う事を理解し、自己嫌悪のループから抜け出すために、日々の目標は現実的に達成可能な物を設定します。
今までが30分しか出来無かったのなら、次の目標は35分。35分になれたら、40分。それの繰り返しです。
ワークや問題の量も一気に増やさない。一つずつ、確認し、納得して増やしていく。それが長期的に変化を続けられるポイントです。
限界を設定せずに、日々の変化はちょっとずつ。ダイエットもそうです。ほんのちょっとの変化を続けること。これぐらいだったら、出来るなと思える様な事を続けていく。そして、出来ない日があったとしても、自分を責めない。そんな日もある。出来るようにするためには、何時やればいいのかを、ちゃんと考える。それを続けていくと、ある日いきなり成長が訪れます。
これは、文章にも言えます。自分が書けないと納得し、でも、高いレベルの論述を出来るようになりたいと願うと、自分の文章の甘さを徹底的にチェックできるようになります。誰でも、言葉のちょっとした使い方の違いや、文法のチェックなど、この程度ぐらい大丈夫と見過ごす物です。けれど、たったひらがな一文字で文章は全く違う意味に変化してしまいます。
それを理解するには、日々。自分が書く文章を自分でチェックし続けるしかありません。自分の感覚を、一つ上のレベルに小さなことから慣らしていくのです。
ほんの少しの変化を毎日続ける。そして、長期目標は限界を作らない。どうせ此処までなんだと言いかけたら、喉で止め、それは違うと言い直す。未来は誰にも決められるものではありません。
大事なのは、自分がどうなりたいか、ということです。
自分を大事にしてください。優しくなってください。そして、成りたい方向へ、向かうべき方向へ、自分を進ませてください。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
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