付き合ってはいけない人~古典にみる人づきあいのコツ~

コミュニケーション術
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こんにちは、文LABOの松村瞳です。

毎年、生徒への試験対策で、センター模試や受験対策用に作られたテストの古典文章を読むのですが、その中で「ああ、本当にそうだな」と思うような文面に出会うことがあります。

やはり時代を経て残ってきた人々の言葉というのは、力があり、納得してしまうものが多くあります。

今日は、そんな文面で触れた文章の中から、心惹かれた次の文章を紹介したいかと。

たった一文ですが、これは今の時代にも通じる、信頼できない人を見抜くコツです。

古典の凄いところは、「人付き合いのコツ」と言われて、スパっ! と即答で短く答えているところ。これ、いきなり聞かれても、「うーん」って迷っちゃうような質問ですよね。けれど、古代の賢人たちは短い言葉で鋭く真理を言いきります。

これは、そんな賢い女性の発した、一言です。

信頼できるって、どんな人?

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【蘇軾 『蘇文忠公』の一節】

蘇軾(そしょく)とは、北宋時代の文学者であり、政治家です。その蘇軾が残した文章であり、今回はその中からなくなった奥さんを褒め称えている文章の中からの一節です。

皆さま、蘇軾って知ってますよね?

蘇軾なんて知らないよ!! と言う人。

いーや、あなたは絶対に知っている。この人のおかげで、私たちはある恩恵にあずかっているので、彼の名前は知らずとも、彼が発明した「あるもの」については、絶対に知っているはずです。だって、コンビニで売ってるもん(笑)

蘇軾の詩人としての号(ペンネーム)は、「東坡」(とうぱ)

彼は、詩人であり、政治家であり、官僚であり特に文才に恵まれた人だったんですが、ある特技があったんですね。

それは、大の料理上手であったこと。

日本人で言うのならば、北大路魯山人のようなものです。池波正太郎でもいいかな。

その東坡。ある自作の料理を作り出し、それを後世に残しています。それは、彼の名前がついた料理名。「東坡肉」と書いて、読みは「トンポーロウ」

そう!!豚の角煮を作ってくれた人なんです。諸葛孔明もだけれど、昔の賢人ってすごいなぁ、と。諸葛孔明が「饅頭」作って、蘇東坡が「東坡肉」作って、約千年後に現代のコンビニで東坡肉まんが売られるようになるとは、予想もしてなかったでしょうね。(こんな試験に出ない事を覚えるのが、大好きなんです)

余談は此処ぐらいまでにして(笑)、東坡が出てきたら、「ああ、角煮の人ね」と覚えておいてください(笑)それだけで、漢文の詩人がぐっと身近になります。身近に感じるって、意外と記憶に役に立つので、無駄な知識ほど覚えてくれるとそれに付随して大事なものも覚えられるようになりますから(笑)

【付き合ってはいけない人】

その蘇軾の奥さま。若くして不幸にも無くなってしまうのですが、その死後。蘇軾は奥さんが日ごろ言っていたことを書きとめるようになりました。

そして、一言。奥さんが言った言葉をこう残しているのです。

来たりて軾と親厚を求むる事甚だしき者有り。君曰く「恐らくは久しきこと能はざらん。其の人と与すること鋭きは、其の人を去ること必ず速やかなり」と。已にして果たして然り。

訳は、こうなります。

また、有る時に、私(蘇軾)の許に訪ねてきて、私としきりに懇意になろうと頑張っているものがいた。あなたはこう言いましたね。「おそらく、その人との付き合いは長続きしないでしょう。せっかちに人に近づこうとする人間は、人から離れていくのもまた、早いものです」と。あなたの言った通り、やがて、その人は私から離れていった。

蘇軾は、高官です。北宋時代だけでなく、王朝時代の中国は官僚と懇意な関係を保っていれば、色々と便宜を図ってもらうことが出来、出世の足がかりとなります。だからこそ、皆、必死に少しでも身分の高い交換と懇意になろうとした。

そんな背景を背負っているからこその言葉だと思いますが、急速に仲良くなろうと近づいてくる人間とは、多分、あまり仲良く付き合うことは長くないと、きっぱり言い切っています。

性急に近付いてきたものは、それだけ離れるのも早い。

短いですが、とても含蓄の深い言葉です。

転じて、急速に距離を縮めてこようとする人間とは、親密な関係を構築してはならない、と警告しています。

何故でしょう?

【急速に距離を縮めたいのは、裏があるから】

あなたが芸能人だとか、ファンを獲得できるほどの何かしらの魅力がある存在ならば不思議では有りませんが、そうでないのならば、相手がこれほどまでに距離を縮めようとしてくるのは、何故でしょうか?

逆に、誰かと急速に仲を縮めたい。短期間で仲良くなりたいと思う時は、どういう時でしょうか?

そう。友達なら、別にそんなことは思わないんですよね。仲良くなる過程も楽しいし、気が合う者同士だから、自然と話が盛り上がる。過ごしている時間が長くなるから、自然と仲良くなる。

人間関係って、やっぱりゆっくりです。感覚や感性があったとしても、お互いの都合だって有るし、タイミングもある。だからこそ、それがぴったり合わさった時が貴重だとも言えるのですが、それは双方に「話してみたいな」「面白そうだな」と相手に対して興味があるからです。

けれど、それが一方的だった場合はどうでしょうか?

そう。

仲良くなることで、何かしらの恩恵を受けたい。利益を得たいと思っている人間が、急速に仲を縮めてこようとします。

だからこそ、その利益を受け取った。もしくは、もっと利益が大きそうな相手が出てきたら、あっさりそっちに乗り換える

そんなことが、起こりやすくなるわけです。

だから、この蘇軾の奥さんは、きっぱりと「では、その人との仲は続かないでしょうね」と言いきった。

早急に、性急に事を進めようとする時は、何か違う目的がある。急いては事をし損じる、と言いますが、性急さは何かしらの裏がひそんでいる、という警告をしっかりと含んでいる言葉になります。

【まとめ】

あなたに愛想よく、にこやかに距離を縮めてこようとする人間は、大抵あなた自身ではなく、貴方の持っているものや人脈、その他の利益を求めていることが大半である。そんな人間は、大抵すぐ離れていくのだから、相手をせずに放っておこう。あなたがなびかなければ、すぐ次へとターゲットを移すのだから。

そんなことを、ここでは語っています。

思い当たることは、有りませんか?

テスト近くなってくる時だけ、妙に近付いてくる人や、面倒な委員会の仕事の時だけ、やたらと近寄ってくる人。

そんな時、何故この人は近付いてくるんだろうと、冷静に相手の立場を考えてみてください。そして、相手をせず放っておきましょう。

その人は決してあなたのことではなく、自分のことしか考えていないのだから。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

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