私の好きな言葉に、「賢者は歴史に学び、愚者は己の経験に学ぶ」という格言があります。
この言葉を好んで引用した人は、初代ドイツ帝国宰相。鉄のビスマルクで有名な、オットー・フォン・ビスマルク。
愚者。つまり、愚か者は自分の経験したことだけで、学べると思い込んでいる。
けれど、賢者。いわゆる賢い人は、他人の経験。特に、失敗の経験から、率先して学ぶことができるのだ、と彼は演説で語っています。
【受験で成功するために】
これを受験に変換すると、他者。つまり、友達や先輩。そして、人生の先輩である周囲の大人たちに、何を聞けばいいのかが、うっすらと見えてきます。
そう。聞くのは、失敗の経験です。
すぐ、どうしても成功の経験を聞きたくなると思うのですが、成功体験って、聞き続けるとだるいんですよね。はっきり言って。自慢話っぽく聞こえる時もあるし。
それよりも、身になるのは失敗経験です。ついでに、そこから這い上がった人がいるのならば、這い上がり方も聞いておく。
苦手教科を克服したやり方や、必ず自分と同じような状態で苦しんでいた人達、というのは先輩に必ず居ます。
どんなに調子良く、苦労も何もなく成功しているように見える人でも、裏側では壮絶な努力をしているのが、常です。
だからこそ、成功している人はすべからく失敗を経験しているのだから、「苦手な教科を克服するために、何をしたのか」を、是非先輩たちに聞いてみてください。
他者の経験を己の経験の参考にできるのは、想像力を持っている人間のみができる事です。
是非とも、先輩たちとまだ連絡が取れるうちに、話を聞いておくのが、受験生の春休みの課題とも言えます。
【歴史にみる、失敗の原因】
私は世界史を教えてはいないのですが、歴史を勉強するのが好きで(というより、歴史小説が大好きで)暇な時に参考書を眺めるのが好きです。
たまたまこの前、質問もあったので、エリザベス女王一世からのイギリス政治と、絶対王政を築き、のちにフランス革命で滅びてしまうブルボン王朝の違いを生徒に説明したのですが、それでふと。このふたつを並べて考えてみると、何故同時期のヨーロッパで、一方は超貧乏国の海賊なんかを国家事業としてやらなきゃ借金まみれで首が回らなかったぐらい、かつかつだったイギリスがその後、世界の第一等国に躍り出て、一方では超お金持ち国家として繁栄しながら、その後とてつもなくド貧乏になるまで落ちぶれてしまい、一家全て耐えてしまうという、頂点からどん底にまで転落したフランスを比べてみると、面白いことが解ってきます。
それは、物事が成功するポイント。その秘訣とも言える部分です。
-エリザベス一世が行ったこと-
まず、成功者の例です。
女王になるまでもすったもんだがあった、苦労人のエリザベス。女王になった後も、色々頭の痛い問題は山積みです。
スコットランドは相変わらず言うこと聞かないし、海の隣のネーデルランドでは、常勝軍人のスペイン王弟アウストリア公・ドン・ファンが来てるし、海からは何時スペイン艦隊が押し寄せてくるか分かんないし……
取りあえず、スペインの力をそぐために、後ろからこっそりネーデルランドにお金渡して、「スペイン食い止めといて!!」って必死に時間稼ぎしたり、海賊行為でスペイン船おそったり、陰でこそこそいろいろ卑怯な手を使ってたエリザベス。さすが、性格がひんね曲がった、化けものですよね。鉄の処女の異名は伊達じゃない。(ほめてます(笑))
背に腹は代えられないエリザベスが、好機を得ます。
それは、元海賊。その後貴族の騎士に任命されたフランシス・ドレイクが世界一周航海から帰ってきて、船の中にいーーーーーーーーっっっぱい、グローブ。つまり、香辛料を詰め込んで帰ってきたのです。
この時期の香辛料は、金に匹敵すると言われるぐらい、貴重なもの。家にある、今では100円で手に入るこしょうの瓶が、中身金に代わるというマジック。
そのおかげで、貧乏国から、ちょっとお金のある国家。今で言うのならば、成金にエリザベスはなりました。
で、普通だったら、今までお金なかったんだし、ちょっとぐらい贅沢して良いだろう!! と、使っちゃうのが普通なんですが……
エリザベスはそんなことをしなかった。
彼女の私生活は超質素だったと言われています。王として、だからレベルが違う話かもしれませんが、少なくともルイ13~14世と比べたら、ものっっすごく倹約しまくってました。
だから、自分かせ豊かになるために使うのではなく、彼女は手に入れた大金を、全て二つのものに全投資します。
一つは、きたるスペインとの海戦。戦争の為に、海軍の増強。整備。軍備の強化。
もうひとつは、植民地として長く支配することとなる、インドに、東インド会社を設立。香辛料のビジネスを成功させ、植民地支配を盤石のものとします。
二つには、共通しているある法則があります。そのどちらもが、国を富ませる。国を豊かにし、安全な状態を確保するためのものに、全てのお金をつぎ込んだこと。
エリザベスが挑戦した賭けは、見事当たります。
インドの植民地からの富と香辛料ビジネスにより、イギリスは世界で最初に産業革命が起こり、近代化が急激に進み、エリザベスの死後も、その経済力は拡大の一途をたどります。
充分に国が潤うまで、彼女は無駄遣いを一切しなかった。
一番、必要な部分に、使い続けたわけです。
その後、イギリスは第二次世界大戦まで、世界の一等国であり続けます。
-ルイ14世が行ったこと-
さて、今度は失敗例。
太陽王という異名が付いている、フランス王、ルイ14世。
彼は領土拡大に意欲を燃やし、その治世のほとんどが戦争をしていたぐらい、戦争好き。領土を広げる事が、何よりも喜びだという、有名な言葉が残っているほどです。
そのルイ14世。デュマの小説なんかで有名な13世と同じく、少年王として即位し、その統治の最初は側近である宰相マザランのおかげで、然程問題なく進むのですが……
そう。マザランさんが、死んじゃってからが問題です。
お目付役が居なくなったと思ったら、この14世。何をしでかしたと思ったら、そう。新しいお家、建てちゃうんです。
ベルサイユ宮殿の建築です。総工費は、今のお金に換算して、約400億・・・当時のフランスの経済規模からしたら、破綻するのが当たり前の値段です。
けれど、ルイ14世はそんなことを考えなかった。
その後も、『領土拡大ーっ!』と費用のことなど考えず、「お金ないなら、税金あげればいいじゃないか」のもと、戦争ばっかり・・・
そのツケが、孫の16世の時に爆発します・・・そう。フランス革命です。
そして、破綻どころか、王国まで亡くなってしまったフランス。
その原因は、どう考えても14世の浪費ですよね。国家の為ではなく、自分の楽しみのために、お金使っちゃったなれの果て・・・悲しい事実です。
【エリザベス的な考え方をしよう】
成功するためには、得た成果は、他のことに使わず、更にそれをもっと拡大する方向に、投資をする。
これを受験勉強に当てはめるとしたら、理解ができる。解けた!! と思った時。その知識を、更に自分の知識を拡大するために、どう使うかを考える、と言うことです。
国語の評論で言うのならば、一つの評論文が分かったとして、そこで「分かった―!!」「点が上がった―!!」と喜んで、勉強していた時間を減らすのではなく、違う文章を読んで、知識の拡大を図ったり、数学でも、一つ問題が解って、早く解けるようになったら、その分出来た余裕を使って、もうひとつ問題を解くことに挑戦してみる。
つねに、「これは自分の身になることなのかな?」「知識の拡大になるかな?」と問いかけてみてください。
そうすると、不用意に時間を無駄にできなくなります。
是非、歴史から学んでください。
賢者の道を、歩きましょう。
ここまで読んで頂いて、ありがとうございました。
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