小説読解 太宰治「走れメロス」その1~あなたは引っかかっていませんか? タイトルの罠~


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こんにちは、文LABOの松村瞳です。

小説読解シリーズ。今回は、太宰治の「走れメロス」

高校2年生で読む小説の次は、中学2年生の課題小説です。

太宰は「人間失格」や「斜陽」などがとても有名な作家で、その人生も含めてとてもおもろしい……というか、興味深いエピソードが満載な作家なのですが、この「走れメロス」もその一つ。

良く、尊い友情。人を信じる心は大切だ。友を信じられる人達は素晴らしい、みたいな人間賛歌として語られることが多い作品ですし、またそれは確かにそう受け取れるのですが、大概生徒に感想を聞いても、「つまんない」「たいくつ」「眠い」という、まぁ、建前もへったくれもないような感想が出てくるのが、この作品であったりします。

(ちなみに「つまらない」も私は立派な感想だと思っています。どこがどうつまらなかったのか。どうして眠くなるのか。そこを突き詰めたら、立派な評論ですし、自己分析にも成り得ますから、素直に言わせています。)

でも、読み方を変えると、この作品。そこかしこに、とっても面白いひっかけが沢山仕掛けられているんですね。言葉のマジックというか、人間の思い込みってすごいなというか。

実際はしていない事でも、上手く誘導すれば他人の思考を自分の思った通りに導くことが出来る。それを意図して太宰がやったかどうかは本人に訊いてみないと何とも判断が付きづらいところですが、どう考えても偶然にこうなったとは、私には思えないんですね。(穿った見方だとは解ってはいるのですが……(苦笑))

なので、いつものごとく。点数は確実に取れるけど、学校の解釈とはちょっと違う斜め上から見た「走れメロス」の読解をお伝えします。合わないな~と思ったら、どうぞブラウザを閉じてください。けど、詰まんない。わかんない。読みたくないと思っている人には、本ってこう読むと楽しくなるし、授業聞きながら「にやっ」て笑えるようになるよ。国語、楽しくなるよ、という読み方です。

そもそも、メロスは走ってない????

 

【走っていない「走れメロス」】

実はこの話。メロスが走っているシーンは、殆どないということに、どれだけの人が気付いているでしょうか。

これを生徒に言うと、「えっ??」とみんな、顔色を変えます。ええ、見てるこちらが面白いぐらいに、表情を変えてくれる。当然、メロスは走っているものだと思い込んでいるので、そもそも頭の中に「そういうものだ」という、先入観が入り込んでしまっているのですね。

この思い込みの力は本当に酷くて、人間の思考を簡単に固定させます。そして、この思い込みや先入観は、多くの場合自分では気が付けないものでもあるのです。

青空文庫「走れメロス」

もしよろしければ、手元に本が無くとも確認してみてください。一体、どれだけ「走る」シーンが存在しているのか。

それを言うと、検索事項が出来るから文章を読みやすくなるのでしょうね。「嘘だっ!」と思いながら、目を皿のようにして読み続けます。しめしめ。

すると、本当に「走る」という言葉が少ないことに気が付けると思います。

走っているとは、本当に書いていない。小説のなかで使われている「走る」という文字は、全部で27個。台詞等を除いて、本当にメロスが走っている描写は、その3分の1の10個程度です。

えっ? そんなに少ないの?? と思われるかもしれません。しかも、この「走る」という描写。後半に固められています。

つまり、最後の最後。ラストシーンのみ、たたみかけるように「走る」という言葉を使っている小説で、全行程の中でメロスが走ったのは、本当に少ない距離なのです。

そんなっ!! と思うかもしれません。結構、この小説。皆さまメロスは必死に走ったと思い込んでいる方が多いのですが、冷静に受け取ると、本当に走っていないんですよね。見事なくらいに。

「でも、だったらタイトルが詐欺じゃないかっ!!」

という叫びが聞こえてきそうですが、これが詐欺じゃないんですよ。実は。

【命令系の言葉の罠】

ちゃんと太宰治は、タイトルで提示してくれているんですよね。「メロスは走っていないよ」って。

タイトル、「走れメロス」

このメロスの前についている、「走れ」という言葉。これっておかしいんです。普通、走っているメロスを描写する言葉ならば、「走るメロス」になるはず。けれども、タイトルは「走れメロス」です。

文法の問題を口に出すと、皆一様に嫌な顔をするのですが、ちょっと我慢して考えてみてください。

「走る」は、ラ行の五段活用動詞です。変形は、走らない、走ります、走る、走る時、走れば、走れ、走ろう、で五段。ら、り、る、る、れ、れ、ろ(…未然形の一部)と変形するから、五十音のひらがな表の表記を使って、五段活用と言われる動詞です。

「走れ」はその中で、命令系に属する変形となります。




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で、ここでちょっと考えてほしいのですが……

君たちが先生や御両親から言われると、いっっっっちばん嫌な言葉って、多分……

「勉強しろっ!!」

という、命令系の言葉だと思うんですよ。

「勉強しろ」「早く寝なさい」「ゲームをするな」「正しい言葉づかいをしなさい」「大人しくしなさい」etc….

全部命令系ですよね。

で、更にお聞きします。

その「勉強しろ!!」と言われる時って、あなたは何をしているときでしょうか?

勉強していますか? それとも、テレビを見ていたり、スマホを見ていたり、ごろごろしていたりする時でしょうか?

大抵一生懸命限界振り絞って走っている人に、「走れーっっ!!」と命令系で声をかける人はいません。「がんばれーっ!!」とか、「負けるなーっ!!」とか、毎日毎日勉強を続けているのならば、「少し休んだら?」とか、身体の心配とかをされるはずです。

そう。命令系の言葉って、その行動をしていない人間。つまり、「走れ」という言葉は、「走っていない」人間にかけられる言葉。

「走れメロス」は、走っていないメロスが主人公の話なのです。

ということで、どれだけメロスが走っていないかの具体的なお話は、また明日♪

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

続きはこちら

小説読解 太宰治「走れメロス」その2~具体的な数字で考える大事さ~

 


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