節分ネタ続きで、今回は最近定着してきた恵方巻き。
巻きずし。特に、中に具が多く入っている太巻きを一人一本。その年の恵方を向いて、無言で丸かじりをし、食べきるという行事です。
今年、2018年の恵方は南南東だそうです。
何時の間にやら定着したこの行事。実は、古いものではありません。定着したのは、1990年代後半であり、全国に広まったのは2000年代に入ってから。
【恵方巻きは広告宣伝行事】
平安時代の宮中行事に端を発する大祓や追儺の儀と違い、恵方巻きというネーミングも、恵方の方を黙ったままで一人一本食べきる、というのも、実は太巻きの売り上げを上げたい、有る業界の宣伝行為による普及が発端です。
有る業界とは、寿司業界と海苔業界。この二つがタッグをくむと、巻きずしが出来あがりますよね。
2月というのは商売。特に、食事関係は売り上げが冷え込むと言われています。今年の日本列島の冬の寒さは厳しいものですが、一年中で気温が一番低くなる二月は、気温も低くなる上に、インフルエンザの大流行時期でもあります。
そんな中で食事を食べに出かけたりするよりも、家に閉じこもる率が高くなるというのが人というもの。人が動かなくなれば、消費率も下がる。
だからこそ、そんな中でどうやって売り上げを伸ばそうかと考えた海苔業界が、海苔を大量消費する太巻きや手巻きずしなどの丸かじりをする寿司を、過去に花柳界(芸妓・芸者の世界)縁起担ぎとして節分に食べていた故事をみつけ、1930年から大阪の鮨業界。そして、1970年代からは海苔問屋協同組合が、宣伝するようになったのです。
これ、どっかで似たような話を聞いたことが無いでしょうか。
そう。土用の丑の日です。(参考⇒土用の丑の日に学ぶ 思い通りに自分を動かすコピーライティング術)
土用の丑の日に鰻を食べれば、夏バテせずに過ごせる、というのは、夏に脂っこい鰻の売り上げが落ちた鰻屋さんが困り果てて、それを平賀源内に頼み込んで考えてもらった宣伝方法。(諸説あります)
「へー、そうなんだ!!」と納得する理由があると、人間不思議と疑問を持たずに、「だったら食べようかな。美味しそうだし」と思ってしまうのが不思議なところ。
ポイントは理由づけですね。
【全国に広まったのは、コンビニの販売戦略】
それで、関西を中心に広まっていた風習が、一気に全国展開したのが、コンビニの販売戦略が原因です。
1990年代。既に宣告展開していたコンビニ。唯の食料品だけでなく、様々なサービスを開始し、イベントごとも行っていたコンビニですが、最初に節分に太巻きを売り出したのは、ファミリーマート。
けれど、これは関西限定で行ったために、全国に広まらず、それを全国展開させたのは、コンビニ業界1位のセブンイレブンです。
こうやって見ると、何故先に全国展開しなかった、ファミリーマート……と残念な気持ちになるのは、何故なんでしょうか(笑)(いや別に、ファミリーマートに肩入れしているわけではないのですが……(笑))
更に、セブンイレブンは「太巻き」という食品に、「恵方」という言葉を付けたして、「恵方巻き」という商品名を作り出しました。
凄いな、セブンイレブン……
名前やネーミングで売り上げが全く変わる、ということ。ファミリーマートの後追いでの販売だったので、新鮮さが無いことから、敢えて新商品ですよということで、商品名を創ったのでしょう。
恵方を向いて食べる太巻きだから、「恵方巻き」
単純だけど、大衆が望んでいるものの基準というのは、どの時代でも変わりません。
大衆が望む基準は、「単純」であり、「解りやすく」かつ、「即効性があり」「誰もが楽しめるもの」です。
この条件をしっかり、「恵方巻き」の商品名はクリアしているんですね。
特殊な能力なんかいりません。
皆で買って、ただ、黙って食べるだけ。それだけで、一年間幸福が訪れるという。
美味しいし、何より楽しいし、鮨業界も海苔業界も売り上げが上がって万々歳。ついでにコンビニの売り上げも上がって、良い感じ。
誰も嫌な気分にならないのは、ビジネスの基本と言いますが、だからこそここまで一気に広まったのかもしれません。
【恵方の根拠は?】
恵方は陰陽道で一番の福の神。歳徳神がめぐる方角の事を言います。
歳徳神(とくとくじん)は、牛頭天王の后とされていますが、日本では牛頭天王=スサノオの尊 歳徳神=クシナダヒメとされ、京都の祇園祭で有名な八坂神社に祀られています。
この歳徳神。四つの方位をそれぞれ順繰りにめぐっている神様です。なので、その方向から、幸福が訪れると言われている方位。
節分にそちらを向いて食べるのならば、是非とも家の中でのその方角を清めてから、食べたいですよね。
神様は綺麗な場所が好きと言いますし。
【まとめ:恵方巻きの効果は?】
「なーんだ、根拠があるわけじゃないんだ。だったら、やるだけ無駄じゃん!」
と思うかもしれません。
けれど、現在に残っている行事って、結局はこじつけだったり、伝承だったり、言い伝えだったりするものがほとんど。
そして、人間の思い込みのパワーって意外に凄いものです。
食べたから大丈夫!!なのではなく、その行事を楽しんで、良い気分で過ごす事が大事。
特に辛い日々でも、悲壮観に満ちている状態よりも、単純に「恵方巻き、美味しかったな~」「豆まきも楽しかったな~」「よし、頑張ろう」と笑顔でいる人のところに、福の神は訪れると思いませんか?
良い節分を。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
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