小説解説 芥川龍之介「羅生門」その1~下人の心情分析~


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有名な小説。芥川龍之介の「羅生門」解説です。

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小説読解 芥川龍之介「羅生門」その8~定期テスト対策問題・解答~

じっくり解説を読んで、小説の読解方法を学びたい、という人は↓へどうぞ。

【イントロダクション】

-大事なことを読み飛ばしてしまう純文学小説-

この小説は大体高校1年生に読むものなのですが、古文体が少し混じっていることと、龍之介らしい短編で書かれている文章なので、馴染みが薄い文体でさらっと書かれています。

なので、展開の解りやすさも手伝って、一度読むと、内容はある程度理解できてしまいます。理解出来たような、気になってしまうのです。

読み返そうにも、文体の難しさも拍車をかけ、展開だけを手軽に取って内容を吟味せず、何も心に残らず読み飛ばしてしまう事も多くあります。

これを回避するには、どうすればいいのか。

-純文学には評論文以上に分析が必須-

小説の読解に一番必要なのは、イメージングと分析です。

イメージングは、登場人物が、今自分の目の前にいるように、頭の中で想像すること。

分析は、登場人物の行動を、「どうしてそれを行ったのか」「何故、それを行わなければならなかったのか」「その理由は」「根拠は」ということを考えられるかどうか、ということ。

主人公の状態を。視界を自分の目の前に起こっているものとして、受け取ってみる。

ドラマや映画、アニメが何故あんなにも人気があるのでしょうか?

それは、想像をしなくとも、その状況が解りやすく映像化されているからです。

想像力は持って産まれたものではありません。仮に感性の鋭さが天性のものであったとしても、受験の小説読解程度の想像力は、十分後天的に鍛えられるものです。

想像力は、鍛えられます。

そして、人間は習性の動物です。

想像力も、同じです。毎回やっていれば、それに段々なれていく。

特に、高校の小説の読み方になれるには、「羅生門」はとても良い課題です。

文章から場面を想像できるようになっておくと、当たり前のように、日常的に何時でも想像できるのです。

受験の場面で苦労をせずにそれを出来るようになるために、最初はちょっとした努力が必要になります。

なので、丁寧に。じっくりと行きましょう。

この「羅生門」という小説。ある意味では、サイコホラー映画さながらの内容が書かれています。

あなたは、自分が犯罪をおかす人間だと思いますか?

この質問に対する答を、少しだけ覚えておいてください。

寂れた街並みってそれだけで心が重くなりますよね。

【冒頭 第1~4段落】

-現代に置き換えて考える-

ある日の夕暮れのことである。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。(本文より)

有名な冒頭です。

少し、考えてみましょう。夕暮れ時。雨やどりを待っている男性です。場所は、今日の都の玄関口である羅生門。今で言うのならば、東京駅、と言ったところでしょうか。




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それが、この男のほかには誰もいない。(本文より)

だだっ広い門の下で、この下人以外、誰もいません。都の玄関口なのに、誰も歩いていないのです。真夜中ならば解りますが、夕暮れ時です。普通だったら、考えられない状況です。

夕暮れ時に、誰も居ない駅前。ものすごく寂しい状況であることが、現代風に想像すると理解できると思います。

この、「現代に置き換えて考えてみる」という作業は、理解には絶対に必要な部分。ここをサボると、後で大変なことになります。

分析って意外に簡単です。
過去の物語だったら、現代に置き換える。
人物だったら、自分ならどうするだろうか。何故、主人公はこの行動を選んだんだろうか、と考えてみる。それだけです。

-羅生門に人が居ない理由-

なぜかと言うと、この二、三年、京都には、地震とか辻風とか火事とか飢饉とかいう災いが続いて起こった。そこで洛中のさびれ方は一通りではない。(本文より)

はい、あっさりと種明かし。

自然災害が立て続いたんですね。だから、都には人が誰もいなかった。

娯楽小説と純文学小説の大きな違いは、読者を次から次へとページをめくらせて、先を取りたい衝動に駆らせる内容と、読者にページをめくらせる手を止めて、一旦考えさせる内容の違いです。

この、災害が続く。そして、本来人であふれていた場所から、人が居なくなるという状態が、どのような心理を人にもたらすのか。

更には、そんな状態であるのならば、人間は誰かと寄りそいたいはずです。けれど、一人でいる下人はどんな状態であったのか。

少なくとも、帰る家がある人は、こんな場所には座っていないはずです。

【環境が与える影響】

-環境に左右される人間-

洛中がその始末であるから、羅生門の修理などは、もとより誰も捨てて顧みる者がなかった。するとその荒れ果てたのをよいことにして、狐狸が棲む。盗人が棲む。とうとうしまいには、引き取り手のない死人を、この門へ持って来て、棄てて行くという習慣さえできた。(本文より)

これは、今でも起こりうることです。

災害で大変な状態になる。

生きているだけで精一杯で、建物の管理や修繕に気が回らなくなる。

見た目的にも、酷い状態に。(ごみが放置。ところどころ壊れている、汚いetc…)

それを見て、更に管理をする気が無くなる。(大変だから)

ますます放置。拍車がかかって汚くなる。

周囲の人たちが、「あそこは汚い場所なんだ」と認識。

ごみを捨てても、構わない場所という認識に。

色んなごみが捨てられる。

荒れ果てる一方。

最初は、ただ「余裕がないから。余裕が出来たらやろう」と後回しにすることで始まるんです。

けれど、それがたまりにたまると見るのも嫌になってくるし、全部やるには大変だと、更に見ないふりをする………どんどん事態は悪化するけど、もうどうしようもないと誰もが見向きもしない状態に・・・・

という、悪循環。

最終的には、死人すら放置されてしまうような場所になってしまった。

都の玄関口に、死体の山が出来ている。そんな場所、行きたいと思いますか?思いませんよね。だから、荒れ果てる一方となる。

そんな場所に、下人は座っています。

逆に考えてみましょう。

もし、下人があなただったとして。

どんな状態だったら、そんな誰もいない。ごみで溢れていて、鼠やキツネが大量に棲んでいて、死体が山のようにあって、恐らく臭いも物凄い場所に、ぼんやりと座りますか?

自分だったら、と思って考えてみてください。

-下人の環境から性格を予想する-

下人は七段ある石段の一番上の段に、洗いざらした紺の襖の尻を据えて、右の頬にできた、大きなにきびを気にしながら、ぼんやり、雨の降るのを眺めていた。(本文より)

自分が座っている建物の上には、大量の死体が放置されている。

そんな場所に座りこむ心境が、どのようなものなのか。

それを考えると、下人がかなり様々なものに投げやりになっている事が解ります。休むのならば、もっと良い場所を探すはず。

探した結果、疲れ果ててここに座るしかなかったのならば、もっとそのような描写があるでしょう。

けれど、自分の頬にできたにきびを触る。気にする余裕がある。早く治らないかなぁ、やだなぁ、と思う感覚がある。

つまり、この下人。

同時に二つや、三つのことをしているのですね。

・行く場所がなくて途方に暮れている。
・にぎびを気にしている。(見た目、人からどう見られるかを気にしている)
・雨が降るのを眺めている。

同時並行で物事を行うということは、何を指し示すでしょうか。

これは後半の下人の行動でも同じ様な場面が出てきます。(にきびを触る、という行動)

テレビを見ながら、勉強をする。
音楽を聴きながら、勉強をする。
友達の話をききながら、宿題をする。

同時進行の行動って、結構私たちは日常生活でやってしまいがちです。

けれど、よくよく考えてください。両立できた時ってありますか?

特に、肉体行動と頭脳労働の場合はまた別なのですが、(散歩しながら考え事をする、など)、頭を使った行動を同時並行することは、殆ど無理です。

出来ているように見えても、実はどちらかが疎かになってしまう。もしくは、両方ともが全く出来ない状態になってしまいがちです。

要するに、意識が散漫になってしまいがちになる。

どれもこれも、ちゃんとした成果が出ない状態になる。だから、人間は、一つの物事に集中しようと頑張るわけです。

でも、下人はそれをしていない。

つまり、下人は全ての物事に真剣に取り組もうという意志がない。と読みとれます。

【今日のまとめ】

下人は考えているようで、真剣に自分の状況を何とかしようという明確な意志がない。なぜなら、面倒だから。

若しくは、考えた結果。導き出される解答が、自分の望むものとは大きく違うものだと言うことが解っているから、敢えて考えることを避けている、とも取れます。

誰だって、つらい現実は見たくない。出来るのならば、見ないで済むようにしたい。

それに、周囲の環境。

荒れた羅生門。雨、夕方から夜の不安定さが、精神的な不安を掻き立てる。

そんな状態が揃った時。

人は、何をしてしまうのか。

 

 

続きはまた、明日。

 

此処まで読んで頂いてありがとうございました。

続きはこちら⇒小説読解 芥川龍之介「羅生門」その2~主人公の性格を把握する~

 


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