2017年度(平成29年度)センター本試験問題解説 評論 その4

テスト対策

こんにちは、文LABOの松村瞳です。

センター評論読解。本文の内容が把握できたところで、問題に移ります。

この問題の吟味が出来ない状態になることが多いのですが、ほとんどの場合、問題は正解の解答文を作っておいて、それを少し変形したものがほとんどになります。

正解の一部を入れ替えたり、順序を入れ替えたりしているものが殆どです。

それを頭に置いて、実際に読んでみましょう。

スポンサーリンク

【内容のおさらい】

冒頭(導入・現状分析)
①現代は科学技術に依存している社会。
②生活そのものが科学技術に支えられているから、切り離したら生活が維持できなくなる。
③今までは問題解決能力があって便利だったけど、最近は科学のせいで起きている災いも沢山ある。

問題提起
④科学者に言わせると、それは無知がもたらす不安から生じる疑問だから、科学知識を持てば大丈夫。けど、それって本当なの? 本当に大丈夫なの?

例示
⑤科学は善と悪のイメージに引き裂かれている。
⑥科学は万能な神ではなく、不器用で問題の多いゴレムの性質が強いんだよ。そっちにイメージを置き換えよう。
⑦ウェーバーの重力波の実験例。実験結果の検証をしたいけど、否定的な意見を表したら、自分が無能だと言われる危険性も生じる。
⑧どんな実験結果が出れば正解なのかが解らないから、思考がどうどうめぐり。
⑨結局、有力科学者の一声で、重力波は存在しない、という論理性とは程遠い理由で、存在の否定(本来不可能なこと)で決着がついてしまった。
⑩一般市民に伝えるべきことは、科学知識などではなく、専門家と政治家やメディア、そしてわれわれとの関係だ。

まとめ
⑪明らかに異なる領域もひとまとめに「科学」と呼ぶのを考えなくてはいけない。

問題点の指摘(筆者の意見)
⑫コリンズとピンチの主張には一理あるが、けれど科学が危い物というイメージは既に広まっていた思考だ。
⑬二人の主張の問題は、科学の「ほんとうの」姿を語るべき存在は、科学社会学者である自分達の存在を押しだす為に、この論議をしているようだと感じる。そこが、二人の論説の問題点だ。

ざっとまとめると、こんなふうになります。

センター評論の問1は漢字なので、今回は飛ばして、読解問題のみを解説します。

スポンサーリンク

【問2】

傍線部A「先進国の社会体制を維持する重要な装置となってきている」とあるが、それはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の①~⑤から1つ選べ。

① 現代の科学には、伝統的な自然哲学の一環としての知的な楽しみという性格を失い、先進国としての威信を保ち対外的に国力を顕示する手段となることで、国家の莫大な経済的投資を要求する主要な分野へと変化しているということ。

②現代の科学は、自然の仕組みを解明して宇宙を説明するという本来の目的から離れて、人々の暮らしを自然災害や疾病から守り、生活に必要な製品を生み出すことで、国家に奉仕し続ける任務を担うものへと変化しているということ。

③現代の科学は、「科学者」という職業的専門家による小規模な知的生産ではなくなり、為政者の厳重な管理下に置かれる国家的な事業へと拡大することで、先進国の競争の時代を継続させる戦略の柱へと変化しているということ。

④現代の科学は、「もっと科学を」というスローガンが説得力を持っていたころの地位を離れ、世界大戦の勝敗を決する戦力を生み出す技術となったことで、経済大国が国力を向上させるために重視する存在へと変化しているということ。

⑤現代の科学は、人間の知的活動という側面を薄れさせ、自然に介入しそれを操作する技術により実利的成果をもたらすことで、国家間の競争の中で先進国の体系的な仕組みを持続的に支える不可欠な要素へと変化しているということ。

【問題へのアプローチ方法】

はい、問題を読んで頂きました。

これをまず、どう解くか。

選択肢を読む前に、あることをしてください。それをすることによって、ぐっと解答率が良くなります。

逆に、それをせずにほとんどの人が選択肢を読み進めてしまい、どれが正しいのかが解らなくなってしまうのです。

人は、③という選択肢が正解だと思っていても、他の選択肢があると、どうしても迷います。確信を持てず、また自分の読解力に自信のない人間ほど、そうです。

なので、まず選択肢を読む前。とくに、練習では、時間度外視でこれを考えてみてください。

【質問を、記述問題を解くように、考えてみる】

選択肢のあるセンター問題でも、基本は国語の解答と同じです。

なので、「どういうことか」と訊かれていたのならば、「違う言葉で説明し直せ」「傍線部の表現を全て言い変えろ」と言われているのですから、傍線部を書き出し、一つ一つ違う表現。文章中に使われている、意味が同じで違う言葉に入れ替えてみる。

得意な人は、自分の言葉で構いません。記述の問題だと思って、入れ替えてみてください。可能ならば、正解文を書き出してください。

文章は書けば書くほど身についていくものです。最初は上手くいかないかもしれませんが、大丈夫。手順さえ踏めば、誰だって出来る簡単なテクニックです。

【実践】

では、実践です。

傍線部A「先進国の社会体制を維持する重要な装置となってきている」

重要な装置、とは何のことなのか。もちろん、科学のことです。

なので、主語は現代の科学技術、となっているのですから、「現代の科学」「19世紀」「20世紀」と関わりのある表記を、文章の中から抜き出します。

・現代社会は科学技術に依存した社会
・19世紀になると科学研究は~知的生産へと変容し始める。
・20世紀になり、国民国家の時代になると、この競争の重要な戦力となる。
・世界大戦が科学-技術の社会における位置づけを決定的にした。

「科学-技術が社会における位置づけを決定的にした」、という表現は、「科学技術に依存した社会」というのと、同一になります。

依存する。つまり、頼り切っている。現代社会は科学技術に頼り切っており、そういう位置づけになってしまった。=重要な装置です。

科学技術は、現代社会を支える、必要不可欠な存在であり、なければ社会体制が維持できないもの。

そして、どうしてそうなったのかの経緯を足します。

科学は、一部の好事家の楽しみの側面から、専門家による知的生産へと変容し、近代から現代へと時代が移る中、国家間の競争のなかで技術と結びついた科学が有力な効果を持つものだったので、先進国における社会のシステムを支えるために必要不可欠な存在であること。

こんなふうに、置き換えを行います。

そして、それを作ってから、改めて、選択肢を一つ一つ、吟味します。

その時に、違うなと思う部分があれば、横に×印をつける。合っている部分には○。微妙だな、解らないなと思ったら、△印を付けましょう。

簡単な作業です。

【①の吟味】

① 現代の科学には、伝統的な自然哲学の一環としての知的な楽しみという性格を失い(○)先進国としての威信を保ち対外的に国力を顕示する手段となることで(○)国家の莫大な経済的投資を要求する主要な分野へと変化しているということ。(○)

はい、全部○です。間違ったことは、一切書いてありません。

けれど、先進国の社会体制を維持する重要な装置先進国における社会のシステムを支えるために必要不可欠な存在

という言い変えが、まったく入っていない。ので、間違い。

意外と思われるかもしれませんが、センターにはこういう選択肢が良く入り込んでいます。間違ったことは、何一つ入っていないんです。本文の内容とぴったり同じ。けれど、問題に答えていない選択肢が書かれているのです。

「本文の内容と同じものを選べばいいんでしょ? これ、おんなじようなことが書いてあるし、これが正解!!」

と考えて、本文と同じ表記を探している人を蹴落とす為の、選択肢です。だからこそ、選択肢を読む前に、自分で答えを考えるひと手間がここで生きてきます。

【②の吟味】

②現代の科学は、自然の仕組みを解明して宇宙を説明するという本来の目的(×)から離れて、人々の暮らしを自然災害や疾病から守り、生活に必要な製品を生み出すことで(△)国家に奉仕し続ける任務を担うものへと変化している(×)ということ。

はい、真っ赤ですね。

まず、科学は自然哲学の一環とは書かれているし、宇宙を説明する営みとは書かれていますが、本来の目的、などとはどこにも書かれていません。

社会の諸問題を解決し、と本文にはあるので、ぎりぎり真中は、△としましたが、生活に必要だから、重要な装置になったわけではありません。国家間の競争に有益だから、社会システムを支える基盤となりえたのです。

階段・坂道しか知らない人が、先進国に行ったらエスカレーターやエレベーターが当然のように動いていたら、「うちはこの国より負けている!」って思っちゃいますものね。だから、生活の色んな場面で、技術を取り込むようになった。それが発達している事が、国家の威信を示すことにもなった。

最後の奉仕の役割は、本文に一切書かれていません。間違い。

【③の吟味】

③現代の科学は、「科学者」という職業的専門家による小規模な知的生産ではなくなり(△)為政者の厳重な管理下に置かれる(△)国家的な事業へと拡大することで、先進国の競争の時代を継続させる戦略の柱へと変化している(ぎりぎり○)ということ。

まず、19世紀の科学者の小規模的な知的生産、という表現は、確かに専門家による、という本文表現から連想できますが、知的生産が小規模だと言うことは言及されていないので、△。

為政者の厳重な管理下には、置かれている国ももちろんあったでしょうし、現在も存在するのかも知れませんが、少なくともこの本文中では書かれていません。なので、×。

戦略の柱、という表現はぎりぎり○。

けれども、肝心の先進国の社会体制を維持する重要な装置先進国における社会のシステムを支えるために必要不可欠な存在

が書かれていないので、間違い。

 

【④の吟味】

④現代の科学は、「もっと科学を」というスローガンが説得力を持っていたころの地位を離れ(○)世界大戦の勝敗を決する戦力を生み出す技術(×)となったことで、経済大国が国力を向上させるために重視する存在へと変化している(○)ということ。

 

評論文では、産業革命から第二次世界大戦までを近代。
第二次世界大戦後~の時代を現代と区分します。

なので、「もっと科学を」という立場を離れ、という表現は本文中で20世紀後半となっているので、○。

世界大戦が、科学-技術の社会における位置づけを決定したとは書いてありますが、勝敗を決する戦力、とは書いてありません。ミスリード。×。

イメージだけで読んでいると、こういうところに引っかかります。注意!!

最後は、本文に合致していますが、これも同じですね。

先進国の社会体制を維持する重要な装置先進国における社会のシステムを支えるために必要不可欠な存在

これが書いてない。国力を向上させるために重視する存在と言っているのではなく、社会体制そのものが、科学技術に依存し、それ無くして現代の社会が回らないようになってしまっている、と書いてあるのです。

 

想像してください。明日からいきなりスマホが使えなくなり、ネットも全てダウンして、電車も、自動車も、信号すらまともに機能せず、電気も使えない。

ほとんどの人が、パニックになると思います。依存していると言うのは、そういうレベルの表現です。間違い。

【⑤の吟味】

⑤現代の科学は、人間の知的活動という側面を薄れさせ(○)自然に介入しそれを操作する技術により実利的成果をもたらすこと(○)で、国家間の競争の中で先進国の体系的な仕組みを持続的に支える不可欠な要素へと変化(○)しているということ。

はい、綺麗な青が揃いました。

過不足ない解答です。特に、下線をひいた部分は、この⑤しか入っていません。社会が科学に依存している事を、説明しているのは、⑤の解答のみです。

【時間がかかっても、最初は丁寧に】

本番でこんなゆっくり吟味なんかしてられない!!

という人が、必ず毎年居ます。

はい、本番でやれとは言っていません。これを慣らし、繰り返していくことで、一瞬で判断できるようになるまで身体に刷り込むのです。

そもそも、はっきりと分かっていない状態で数をやっても、無駄です。無意味な積み上げで、勘で一発勝負をするのか。それとも、納得がいくまで考え、吟味をし、理解をしたうえで明確な意味のある積み上げを行うのか。

この記事を読んで、しっかり考えてみてください。

楽な方法は、ありません。

唯一楽になる方法は、「誰もが出来るけど、面倒なことを、面倒でなくなるまでやり続ける」ことです。

明日も続きの問題解説をします。

ここまで読んで頂いて、ありがとうございました。

コメント

This site is protected by wp-copyrightpro.com

タイトルとURLをコピーしました