2018年度(平成30年度)センター本試験 国語 漢文解説

テスト対策

2018年度 平成30年度のセンター本試験 国語の漢文を解説していきます。

2018年度 センター本試験 問題

今回は北宋時代(960~1126年まで)の文章から。

ちょうど、日本では平安中期~後期に当たる時代の読み物です。大体、藤原道長とか清少納言とか紫式部が活躍していた時代ですね。

漢文の良いところは出て来るたびにその時代の確認を年表で出来る事。世界史の補強にもなります。これは、古文と日本史でも同じ関係ですね。

繋がった知識というのは、容易に忘れません。なので、色んなところから繋げるための線を持っておくと、ベスト。解らなかったらすぐ確認、という行動が、全てにおいて地味だけど一番強い典型です。

話を戻して、今回の漢文ですが、これも古文と共に基礎が出た!という印象です。

古文の解りやすい基礎と違い、今回の漢文は知っていても繋がらなかった人が多かったのではないでしょうか。特に書き下しと訳のセットになる問題の部分では、足元をすくわれた人が多かったように感じます。

人は不安な時、どうしても自分の知らないところに解答が埋まっているのではないか、と考えがちになってしまいますが、その傾向を上手くついた良問、と言わざるを得ません。

難易度は本当にそこそこなのですが、点数取れなかった人も多かったのでは……と思える問題です。(問題作った人、相当に性格悪いですね。(褒めてます))

あやふやな知識。受験生が一瞬意味に戸惑うであろう部分を、上手く問題に織り込んでいます。そして、従来の出題形式との変化が顕著だったのも、漢文です。

漢文の問題はなんだかんだと変更が多いので、基礎力の強化が必須ですね。

見慣れない問題がくる、と覚悟しておけばそんなに動揺はないはず。それが来年に向けてのポイントにもなります。

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【本文解説】

嘉祐(かゆう)という、学者の息子がいた。この男は世の中が平和な時は愚か者のようであったが、寇準(こうじゅん)という政治家だけがこれを知っていた。

この冒頭で、読解に失敗した人が多かったようです。

平時。つまり、平和な時には馬鹿のように見えたけれど~と書いてあるのだから、乱時。つまり、戦争の状態や動乱期。知恵が必要となる場面では、そうではない、と続くのが対比の常です。

つまり、嘉祐はとっても賢かったけど、普段はとっても馬鹿に見えた、という描写であり、なぜか寇準だけが知っていた、と言っているんですね。

その賢さを寇準が知ったエピソードが次に続きます。

寇準が北宋の都である開封府で知事をしていたころ(寇準は政治家、というのが読解のポイント)嘉祐に質問をした日があった。

寇準は嘉祐にこう問いかけた。

「世間は私をどう噂しているのだろうか?」
嘉祐は答えた。
「世間はあなたがすぐにでも朝廷にはいり、宰相になるだろうと噂しております」
寇準は更に問いかけた。
「お前はどう思っている?」
嘉祐は答えた。
「あなたは、まだ宰相にならない方がよろしいでしょう」
「どうしてだ?」
「古来から、賢い宰相が功業を成し遂げ、人々に恩恵を施す事が出来る理由は、君主と臣下の関係が、まるで魚が水を得ているような関係(理想的な信頼関係)であったからです。だから、宰相の意見は君主に取り入れられ、計画は受け入れられ、名声も君主と臣下は共に上がっていくことになるでしょう。けれど、今あなたが人々の期待を背負って宰相になったならば、身内も世間も皆、あなたが平和な世界を実現してくれるだろうと期待をかけるでしょう。

さて、あなたと皇帝は、理想的な信頼関係に有りますでしょうか?(違いますよね)

これが、私があなたの名声が損なわれることを恐れる理由です。」

寇準は喜んで嘉祐の手を取り、こう言った。
「お前の父は文章においては天下一の才能を持っているが、その未来まで見通す見識の鋭さと思考の深さは、息子のお前に勝てるはずもない。(お前の方の見識が何と勝っている事だ)」と。

嘉祐さん、頭良いですね。

なんでこれで愚か者なんだ(笑)

多分、今で言うのならば勉強大っ嫌いで、学校の成績最悪だけど、でもビジネスとか、芸術とかでは大成功収めた人、のような気がします。アインシュタインとかエジソンも小学校で難ありだったエピソードがありますから、結構珍しくもないのかな。

センター漢文の読解のポイントは、原因と理由をはっきりと明確にしておくこと。

訳が出来ない部分があっても、全体の話のストーリーがしっかりと流れていれば難しくなく予想が出来ます。

ポイントは、

・嘉祐は学者の息子だったけど、馬鹿だった。
・寇準は有名な政治家。民衆の期待を背負いまくっている。
・君の意見は? と嘉祐に聞いている。(宰相になるべきか、否かということ)

ここまでは簡単に読みとれます。大事なのは、嘉祐の意見を聞いた寇準の反応です。

最後

・喜んで立ち上がり、嘉祐の手を取って……

と有りますよね。ということは、嘉祐の意見は喜ばれた。

迷っている時って、どういう意見が喜ばれるだろうと、考えてみてください。人に意見を聞くという事は、そもそも寇準は迷っているんです。

誰もがなりたい政治の中枢。民衆には地位に就くことを望まれている、というのはとても良いことのように思われる。けれど、期待を背負っているということは、プレッシャーです。

失敗したら、期待は非難に変わりますからね

それをとても恐れていた寇準。だからこそ、馬鹿にも意見を聞いたわけです。で、恐らく気まぐれだったその問いかけに、超優秀な答えが返ってきた。

だから喜んだわけです。

宰相になった方が良いと言っているのか
または、宰相にならない方が良いと言っているのか。

それを見抜くのがこの問題の肝と言ってもいい部分。

そうやって本文を見ると、到る所にヒントがあります。

一番のヒントは、「あなたは皇帝と理想的な信頼を築いた主従関係に有りますか?」という言葉があります。更に駄目押しで、「それがあなたの名声に傷が付かないか、私が恐れている理由です」と言いきっているわけだから、「皇帝との信頼関係なんて、まだないよね」とどきっぱり言い切ってるわけです。

だから、それが作れない以上、宰相になるべきではない。まだ今は、と条件をきっぱりと記した上に、何故駄目なのかという原因までもを付けくわえている。

凄まじく、優秀な答です。

漢文は問題になっている部分の読解のヒントが、文章のほかの部分にちりばめられています。

そこを丁寧にくみ取れるかがポイント。

解説をしていて本当に思いますが、どれもこれも丁寧さが必要になってきていますね。

恐らく、予備校のテクニックだけを詰め込んだ人間を降り落したいセンター機構の意図が問題からにじみ出てくるよう……(笑)

腹をくくって、丁寧にやるしかないと覚悟を決めるしかないようです。

【問1】

二重傍線部x「議」、Y「沢」の意味の組み合わせ。

はい、来ました。語句の意味。

これも例年と違って変形された問題でしたが、本文と照らし合わせれば解ります。

特に、「議」その直後に、「世間はあなたに宰相になってほしいと噂している」と有るのだから、良い噂ですよね。そこで選択肢を③④に絞れる。否定的な評価ではないので、③の論評(プラスでもマイナスでもない)④礼賛する(ほめたたえるの意)を選ぶ。後はばっさり捨てる。

Yの「沢」ですが、「与える」という意味があります。この場合、下では③「恩恵を施す」④「物資を供給する」と有ります。

本文から、賢い宰相の行いは、となっているので、政治は物資だけに限定されないし、よくよく考えれば、Xの「議」も、寇準が自分で「皆は私をどう礼賛しているか」なんて聞いているのもおかしい。

ということで、解答は選択肢③

【問2】

傍線部Ⅰ「知之」傍線部Ⅱ「知開封府」の解釈を選べ。

はい、本文訳です。ここでのポイントは、「知」という漢字の意味。

まず、Ⅰですが、

嘉祐が賢いことを意味している選択肢は、①と②。

ここで、平時の対義語の乱世という言葉に引きずられて、②を選ぶ人が多かったと思います。

けれど、現実は残酷です(笑)

ここで考えてほしいのは、この話している時が乱世かどうかということ。

確かに、有能な人に宰相になってもらいたいのはこの世の常ですが、乱世ならば二人の話の内容に、どこの国がどこの国に攻め込んで……という話があったり、乱世で才能を発揮し、世に出た人間ならば愚かなどと評されません。

なので、愚かではないことを知っていたと書いてある、①が正解。

単純な対比の意味合いだけでなく、内容を吟味しないと正解にたどりつけない良問です。テクニックだけや焦っていると間違えた人も多かったのでは。

そして、Ⅱ

これのポイントは、寇準が有名な政治家、と注釈に有ることです。

それと、文章が「準開封府」となっている事。レ点返り点通りに読むとするのならば、「寇準は、開封府の「知」であった。」という文になる筈です。

ポイントは、この文章は短文で、これで終わっているということ。なので、寇準しか関係ない文章です。なので。嘉祐は出番なし。

なので、寇準の存在しかない、選択肢③④しかあり得ません。後は、別の人が存在します。

そして、④は受身でなければならない文。本文には、受身の句形は一切ない、能動の文です。

なので、正解は選択肢③。

寇準が政治家だったことから、知事の「知」であることは、想像できるかと。

【問3】

傍線部A「丈人不若未為相。為相則誉望損矣」について、(ⅰ)書き下し文(ⅱ)その解釈を選べ。

はい、来ました。今回の漢文のハイライト。一番の難問です。

これ、引っかかった人多いんじゃないのかな。

これは、ポイントは上の一文。丈人不若為相。の書き下しが出来るかどうかです。

未は、再読文字の「未だ~ならず。」まだ~しない。という意味です。「未だ相とならず」と読めます。これは、絶対ですね。訳は「まだ宰相にならない」

そこで問題になるのが、その前にある、「不若」の読み。

句形に弱い子もいるでしょうから、推理しましょう。

これ、たとえば、「若」=「なんじ」と読ませたとしたならば、「不」は否定となります。そうなると、再読の否定と合わさって、二重否定=強い肯定になってしまう。

あなたは、まだ宰相にならないというわけではない。=宰相になれ!となってしまい、全体の文脈から大きく外れます。となると、「不」は否定では読めない。

なら、他の読みはと選択肢をヒントに考えると、若かず、と読ませる訳がならんでいます。

そう。

AはBにしかず。「A不若B」

比較の句形です。AとBを比べて、AはBに及ばない。Bの方が良い、という形のもの。

この文章では、A=丈人、B=未為相です。

あなたは、まだ宰相にならない方が良い、と言っているわけです。

この比較の句形ですが、混乱しやすい。訳がきちんと頭に入らない句形として、有名なものでも有ります。

ですが、教科書で何度も出てきているので、見たことは有る筈です。英語もそうですが、比較の文章は混乱しやすい。どちらを良いと言っているのかが、解らなくなる。さらに今回はそれにセンター必須の再読文字をかませて混乱の度合いを深めています。

書き下しは、丈人未だ相と為らざるに若かず。

なので、正解は(ⅰ)は④(ⅱ)は③です。

恐らく、この問題で多くの人がセットで間違ったのでしょう。基礎の怖いところは、しっかりと覚えていないと、どうしても複雑なものを選びとってしまう危険性を含んでいるところです。

この比較の句形。

せっかくなので、馬鹿な覚え方を一つ。

比較の覚えにくさは、どうしたって避けられないものです。読みと意味が一致しない。なら、それを問答無用で一致させれば良い。

それこそ、一瞬で解るぐらいの、馬鹿な例文を作ってしまうのです。比較なんて考えられないくらい、極端なやつを。

あなたが食べ物のなかで、見るのも嫌で、大っ嫌いなもの。食べるなんてとんでもないものを考えてください。

人ぞれぞれなのであれなのですが、まぁ嫌いな人が多い野菜だと、玉ねぎとかピーマンですよね。それに比べて、お肉って皆大好きですよね。別段、チョコとかケーキとかでも良いんですが、ジャンルは何でも良いです。自分の大好きなものと、大嫌いなものを思い浮かべて、それを比較の句形にぶち込むんです。

AとかBとか覚えにくいし、「あれ? どっちだったっけ?」って絶対になりますよね。というか、私は良くなりました。だから、自分なりの例文で覚えるのが手っ取り早いと(昔から無意味な文を考えるのだけは好きだった)

だから、AはBに若かずという例文。

ピーマンは肉に若かずで覚えちゃう。ピーマンより、肉の方が良いよね、っ意味。考えなくたって出てきますよね。

大嫌いなものをAに。大好きなものをBに入れてください。

ちなみに私は、「生クリームはチョコに若かず」で覚えました。(生クリーム大っ嫌いなんです……)

「あほかっ……」

って言われそうですが、解りやすさって大事です。というか、アホでもなんでも、覚えられたらそれが勝ち。なら、自分の好き嫌いを利用して、比較は覚えましょう。私は英語の比較もこれでほとんど覚えました。どっちが良いのか、絶対に間違わなくなったのは、大嫌いな生クリームのおかげです。(笑)(好きな人、ごめんなさい)

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