こんにちは、文LABOの松村瞳です。
今日は、更に実践を積み上げます。
過去の助動詞「けり」と接続助詞の「て」
共に、動詞の連用形に付くという性質を持っているこの二つを利用し、話の内容が解りやすいもので徹底的に練習をします。
算数の計算問題と一緒です。基礎が積み上がっていなければ、上に何を積み上げても無駄。全ては、基礎の考え方を身につけてからです。
受験の最大の敵は、焦りです。
その焦りに、打ち勝っていきましょう。一つ一つ、一歩一歩です。
【実践-宇治拾遺物語「児のそら寝」-】
では、基礎編の2、3で使った「児のそら寝」の続きを使って、文法練習しましょう。
-本文-
この児、さだめておどろかさむずらむと待ちゐたるに、僧の、「もの申しさぶらはむ。おどろかせたまへ。」と言ふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへむも、待ちけるかともぞ思ふとて、いまひとこゑ呼ばれていらへむと、念じて寝たるほどに、「や、な起こしたてまつりそ。をさなき人は寝入りたまひにけり。」と言ふ声のしければ、あな、わびしと思ひて、いま一度起こせかしと思ひ寝に聞けば、ひしひしと、ただ食ひに食ふ音のしければ、ずちなくて、無期ののちに、「えい。」といらへたりければ、僧たち、笑ふこと限りなし。
-訳-
この子供が、きっと起こしてくれるだろうと思って待っていたら、僧の一人が「もしもし、目をお覚ましになってください。」と言ったので、うれしい!とは思うけれども、たった一回で返事をしたら、出来あがるのを待っていたのかと僧たちに思われるのが嫌で、もう一声呼ばれてから返答しようと、我慢して寝ていると、「いいや、起こさないでおいてあげなさい。幼い人は寝込んでしまわれたよ。」という声がしたので、ああっ、つらいと思ってもう一度起こしてくれないかなと思いながら寝て聞くと、むしゃむしゃと、ただ食べに食べる音がしたので、どうしようもなくて、久しくたった後に、「はいっ!!」と返事をしたので、僧たちは笑う事に際限がなかった。
-「けり」と「て」をチェック-
今回は動詞と接続している部分のみ、抜き出します。形容詞・形容動詞・助動詞と接続している部分はややこしくなるので、無視です。
この児、①さだめておどろかさむずらむと待ちゐたるに、僧の、「もの申しさぶらはむ。おどろかせたまへ。」と言ふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへむも、待ちけるかともぞ思ふとて、いまひとこゑ呼ばれていらへむと、②念じて寝たるほどに、「や、な起こしたてまつりそ。をさなき人は寝入りたまひにけり。」と言ふ声の③しければ、あな、わびしと思ひて、いま一度起こせかしと思ひ寝に聞けば、ひしひしと、ただ食ひに食ふ音の③しければ、ずちなくて、無期ののちに、「えい。」といらへたりければ、僧たち、笑ふこと限りなし。
もしよければ、解答を見る前に自分で解答を考えてみてください。
大事なのは、思考の過程です。
順序を間違えない事。順を追って、考えを積み上げる練習をすることです。
では、解答です。
①の解答。
さだめて
「て」の上は連用形。
ひらがな「め」は、マ行。なので、基本形は「さだむ」
特殊系6種はなし。通常系3種で判断。
「ず」をくっつけると、「さだめず」となり、下二段決定。
解答は、マ行下二段活用「さだむ」の連用形。
②の解答。
念じて
「て」の上は連用形。
ひらがな「じ」は、ザ行。なので、基本形は「念ず」
特殊系6種の中で、「す・おはす」を持っている、サ変にこれは引っかかります。「念+す」が濁った形です。
解答は、サ行変格活用「念ず」の連用形。
③しけれ
「けれ」の上は連用形。助動詞の「けり」の変形。已然形の形です。
ひらがな「し」は、サ行。なので、基本形は「す」
特殊系6種のサ変に引っかかります。
解答は、サ行変格活用「す」の連用形。
です。
今回、少しずつ特殊系が出てきました。
ぜひとも、これが終わったら自分の持っている文法の問題集を開いて基礎の文法問題をやってみてください。ぐっ、と楽になっているはずです。解らなかったら、まず変形表を横に置いて、やってみる。
ポイントは、変形のひらがなに気付けるかどうかです。
この後は、助けてくれる物や、判別の難しいものを徹底的に判別していくだけ。
より、実践的になります。
それは、また明日。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
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