2018年度(平成30年度)センター本試験 国語 小説解説

テスト対策

【問4】

傍線部C「郁子はまるで見知らぬ誰かを見るように~」とあるが、その時の郁子の心情はどのようなものか。

はい、これも間違えた人が多かった問題です。

ここも本文の描写を良く読んでほしいのですが、郁子は自分達はふさぎこむように重苦しい生活をしていたはずだと思い込んでいます。けれど、写真に移る姿は幸せそうに笑っている自分達。夫だけでなく、自分も笑っているのです。

まるで、自分たちではなく、見知らぬ誰かのように見えた。つまり、自分達だとは思えなかった。

けれど、それで気が付きます。

生きていく以上、笑っていくのだと。幸せな時間を、幸福な時間を過ごすようになっていった事実を写真に教えられるのです。

ここでのポイントは、幸福になろうとしていた、笑い合っていた、ということ。

息子を亡くしたというつらい現実を受け止め、悲嘆にくれながらも、幸福に向かって生きていた自分達の姿を、写真に教えられた、という事実。

これが過不足なく書かれているのは、選択肢④です。

あくまでも、「幸せに向かっている」「幸福に生きようとしていた」しかも、自分はそれに気が付いていなかったこと、が書かれていることが重要。

⑤は、互いに傷付けあった、が間違い。妻は暴言を口にしていましたが、夫は受け流していたので、傷付けあったとは言えません。

他の選択肢は、実は大きな間違いは有りません。けれど、この「幸福に無自覚に向かおうとしていた」という記述が、④しか入っていないので、後は全て相応しくない、ということになります。

より適当なものを選ぶ、というセンター問題の特徴を表したような良問です。

 

【問5】

傍線部D「その必要はありませんと郁子は答えた」とあるが、このように答えたのはなぜか。

校内を見なくても良い、と郁子が言っているのは、「既に知っているから」です。

何故、知っているのか。夫の言葉で、聞いていたから。その言葉が自分の中に確かに刻まれ、残っていることに気が付くシーンです。

この、夫の言葉が35年の夫婦生活のなかで、いさかいもあったけれど、降り積もるものも確かにあった。それを書いてあるものを、選ぶこと。

正解は、③

①は、降り積もる言葉、積み重なった時間が自分の中に刻まれている表記が無し。なので、駄目。
②は大切なことは記憶の中にある、という内容ではないので、間違い。全体的に、この選択肢は質問に対しての答えを書いてない。
④はようやく許す心地、というのが間違い。許せないと思って苦しんでいる描写はないので、この表現は不適当。
⑤今は彼のことをいたわってあげたい、という表記が間違い。本文からはその内容が受け取れない。

 

【問6】

この文章の表現に関する説明として適当でないものを二つ選べ。

はい、きました。意地悪問題。

時間制限のあるセンターにとって、○○行目のこの表現、と指示されても、中々確かめる時間がありません。だからこそ、全体的に処理能力を上げる訓練は必須です。

しかし、それでも今回は意地が悪かった(笑)

正解の間違いを含んだ選択肢は、③と⑥。

③は、56、87、97行目の()でくくられた描写が、郁子の隠したい本音である、となっているのですが、56行目や87行目は確かにそうです。
けれど、97行目だけは、感謝したい、という気持ちがくくられています。感謝は別に人に隠す必要のある本音ではないので、ここが間違い。

前半の二つを確認して、最後まで確認しなかった人が引っかかった。意地悪です、センター。ある意味、これを冷静に処理する時間を稼げない人は、不正解だと言いたいのが、伝わってくるようです。

⑥は、前者には郁子の悔やんでいる気持ちが表れている、という部分が間違い。
夫の郷里を訪ねていなかったことを後悔するような描写は全く有りません。「そういえば来たことなかったなー」と思っているだけです。

これも、二つの文章表現が書かれていますが、前半だけが間違いで、後半が当たっているという構成。

正解に間違いが一部だけ紛れ込んでいるタイプです。冷静さと、確認する時間が必要な問題です。

 

時間が必要。国語ではどうしても言われる言葉です。

だからこそ、速読を習ったり、早く処理する必要性がどうしてもある。

文章を読む速さを上げるには、練習しかありません。速読法は多種多様出ていますが、速さが無いと思う人は、対策を取ってください。直前で欲しがっても、こればかりは無理です。

【まとめ】

こうやって教えていると思うのですが、男性にとって恋愛ものはあくまでも恋が成就するまでの過程を描くもので、日常生活で相手に対して抱く、様々な感情の機微、というのを読みとるのは、酷く難しいことなのかなと、考えてしまいます。

是非、男子諸君は来年のセンター対策で、恋愛小説を読み慣れておくか、せめて少女漫画を何か一つ、読んでおいてください。最近話題になった「逃げるは恥だか役に立つ」とか、「ちはやふる」とか。(ちはやふるは百人一首も同時に学べるのでおすすめです。)

恋愛ものが出やすいのは、それだけ人間の感情の機微が表れやすいからです。そして、小説の特徴である、書かれていない部分の人の感情の動きをどれだけ読みとれるかにかかっているので、今後も出やすい傾向があります。

是非、対策を取ってください。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

明日は古典です。

続きはこちら

コメント

This site is protected by wp-copyrightpro.com

タイトルとURLをコピーしました