正しい反論の仕方とは
さて、冒頭でお話しした裏のテーマです。
これは小論文対策にも有用なので、ぜひ必要な人は読んで頭の片隅に常に意識するようにしてください。
反論をする前にやること
まず、何かしらの「反論」を行いたいとき。相手の意見を
「それは違うのではないか」
と言いたい時にどうすればよいのか。
まず大前提として、相手の意見に対して反論をすることは素晴らしいことです。
ただ、同時に反論は相手を傷つけるための刃ではないことも、自覚しておきましょう。
話し合いをする。議論をするという行動は、「どちらが正しいか」を決める行動ではありません。
議論は相手のことをより良く知りたい。理解を深めたいからこそ行うものなのだという前提をしっかりと認識しておきましょう。
そこがまずスタートラインです。議論はどちらが正しいかを決めるために、行うものではありません。それは、法律関係者のお仕事ですし、どちらが正しい、なんてことを明確にしても、仲良くなるどころか相手に嫌われるか嫌がられるか、まぁ、好意を持たれることは全くもってないことだけは保証できます。(苦笑)
もちろん、理解できない場合もあります。それでも、議論の末に「この人とは分かり合えない」ということが解るだけでも前進です。疑問や質問は、相手を理解したいから行う行動であり、反論はある意味自分を知ってもらう行動である、ということも同時に理解しておきましょう。
そう。結局議論はコミュニケーションの一部なのです。
相手の発言の背後にある「概念」を確認する
筆者は、「自己責任論」の背後にある概念をきちんと分析しています。貧困を考えるにあたって、本文の至る所に自己責任論に対するアンチテーゼのような部分が散りばめられています。
なぜ、そのような考えに至ったのか。前提はなんなのか。どうしてそれを相手は主張しているのか。
一つの主張に至る背後には、さまざまな要素がその背後に存在します。それら全てを理解することは難しいかもしれませんし、もしかしたら全く違った前提を構築してしまうかもしれません。けれども、何もしないより「まし」です。
前提や概念を考え、自分の想定が間違っていた場合も含めて、できれば二、三種類の概念を想定して、相手の発言の背後にあるものを考えます。
これは相手に反論をしたいときに、必ずやらなければならない行為です。
自分の考えの背後にある「概念」を確認する
そして、相手の考えの分析が終わったら、今度は自分の考えの背後にある概念はなんなのかを、考えます。
これは相手の意見の背後を考える難しさよりも、格段に跳ね上がります。
なぜなら自分の意見には、どうしても甘くなりがちです。(笑)そして、自分のことが実は一番よく分かっていないのが人間というものです。そのための確認事項として、「どうして自分はこういう考え方になったんだろう」「どうしてそれが一番良いと思ったんだろう」「なぜ、この意見に反論したいと思ったんだろう」「反論して、相手のことを理解したいと思っているのだろうか」「議論をして、自分は何をしようとしているのか」「反論の目的は?」など、自分に問いかけることはとても大事なことです。
これを自問自答と言うのですが、自分の内観にもなりますし、意見の形成がやりやすくなります。
そしてこの「問いを立てる」という行動が、冷静さを自分に取り戻させるきっかけにもなります。
「定義」「概念」の違いを理解する
相手の意見と自分の意見を分析するとき、ヒントになるのが、定義と概念です。
定義は、ある物事に対してどのような意味合いを設けているのか。
この評論で言うのならば、「自己責任論」の意見を出している人達は、貧困をどのような定義づけしているのかを、考えます。
そうすると、貧困は悪いもの、失敗者、怠け者が陥る状況である、という定義づけが見えてきます。真面目に生きていれば、決して陥る状況ではない。そういった定義を貧困に対してつけている考えが、見えます。
ならば、概念はなんでしょうか。
概念は共通項です。定義づけに共通しているのは、社会的な下位には落ちたくない、という恐怖が伺えます。真面目な生活を、努力をしている人間は幸福になる、といった願いのようなものも見え隠れします。まるで、努力している人間が貧困に陥る世界など、みたくない。そんなものはありえない、と頑なに否定しているようなイメージさえ、漂ってきます。
自己責任論を強固に押し出している人々は、きっと努力家なのでしょう。それこそ血の滲むような努力で、貧困状態から抜け出した人もいるかもしれません。だからこそ、抜け出せない人たちのことを許せない。許したくない。許してしまったら、自分の血の滲むような努力はなんだったのだと空しくなるかもしれません。
だからこそ、「自己責任だ」と切って捨てます。自己責任だから、自分の努力で這い上がれるはずだ、その力があるはずだと、必死になって訴えているような……
そんな人に対して、「あなたの考えは間違っている」と、同じ強さで言えるでしょうか。言ったとして、理解が深まる話し合いができるのでしょうか。
紙に書き出す
分析が終わったら、ぜひ、反論をSNSに書き込む前に、物理的な紙の上に書き出してみてください。
反論をしたくなる時、というのは何かしらで感情を揺さぶられた時です。大抵、それはマイナス方面で、怒りである時がほとんどです。
怒りは、自分の中の何かが傷つけられた時に発する感情です。この意見を認めてしまったら、何かしら自分の中の何かが崩れてしまう時に、人は怒りを抱きますし、悲しさや、残念さを感じます。
ならば、自分は何に傷ついているのか。どうしてこれを書き込みたいと思ったのか。それをする目的はなんなのか。
それらを紙に書き出した後、読み直してそれでも書き込みたいと思ったら、書き込んでみてください。
それぐらい、ネット上の発言というのはコントロールが効かないものです。熟考に熟考を重ねて、書き込んでいいものなのか。なぜ自分はそれを言いたいのか。相手に伝えて、何を達成したいのか。それらを考えることで感情は収まりますし、冷静になっていきます。
面倒だと感じるかもしれませんが、小論文の対策をしたい人は日常的にこれを癖付けておくと、かなり良い訓練になります。
意見や言葉の裏側にある、思想、概念、定義づけ、そして相手の発言の意図も含め、さまざまなことをぜひ、「考えて」ください。
パスカルは私たち人間のことを「考える葦」と表現しました。
植物と人間を分けるのは、「考える」という行動です。ぜひ、頭をフル回転して「考えて」みてください。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
次は、テスト対策問題です。
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